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化 学 (4 問題 100 点)
化学問題 Ⅰ
次の文章(a),(b)を読み,問 1〜問 6 に答えよ。解答はそれぞれ所定の解答欄に記入せよ。問題文中の L はリットルを表す。原子量は,H = 1.0 ,O = 16 ,C a = 40 ,C r = 52 ,S r = 88 ,B a = 137 とする。[ X ] は,物質 X のモル濃度を示し,単位は m o l / L である。
(a) 周期表の 2 族に属する元素は,すべて金属元素である。2 族元素の原子は価電子を 2 個もち,価電子を放出して二価の陽イオンになりやすい。これらの単体は,同じ周期の 1 族に属する元素の単体に比べて,融点が ア {高く・低く} ,密度が イ {大きい・小さい} 。
2 族元素のうち,カルシウム,ストロンチウム,バリウム,ラジウムは特に性質がよく似ており,ウ と呼ばれる。ウ は,イオン化傾向が大きく,その単体は,常温で水と反応して,気体の エ を発生し,水酸化物になる。
表 1 は,水酸化カルシウム,水酸化ストロンチウム,水酸化バリウムの,各温度での水への溶解度を示している。これら 3 つの水酸化物を温水にいれ,冷却したときに何が起こるかを見てみよう。なお,この実験において,空気中の二酸化炭素の水溶液への溶解や,水溶液からの水分の蒸発は無視できるものとする。
表1 各温度における各水酸化物の溶解度(g/100 g 水)
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100 g の温水が 80 ℃ に保たれた 3 つのビーカー(i),(ii),(iii)を用意し,5.0 g の水酸化カルシウムをビーカー(i)に,5.0 g の水酸化ストロンチウムをビーカー(ii)に,5.0 g の水酸化バリウムをビーカー(iii)に添加し,温度を保ちつつよく混ぜた。これら 3 つの試料を 20 ℃ まで冷却,静置した後,ビーカーの底の沈殿をとりだし,室温で十分に乾燥させた。これらの試料(以下,沈殿乾燥試料と呼ぶ)について,質量を測定したところ,ビーカー(i)では オ g,ビーカー(ii)では カ g,ビーカー(iii)では 2.3 g であった。これら 3 つの値のうち 2 つは,表 1 にしたがって,沈殿乾燥試料が水酸化カルシウム,水酸化ストロンチウム,水酸化バリウムであるとして計算した時の質量と異なっていた。
この原因は,3 つの水酸化物のうち,2 つは以下の式(1)のように,沈殿が n 水和物となるためである。M はカルシウム,ストロンチウム,バリウムのいずれかである。また,n は M に対応した個別の値をとり,正の整数である。
M 2 + + 2 O H − + n H 2 O ⟶ M ( O H ) 2 · n H 2 O ↓ ( 1 )
このような水和物の n の値を求めるため,対象試料の温度を一定の速度で上昇させ,質量変化を測定する方法がある。水酸化物の n 水和物は,ある温度になると水和水が一段階で全て脱水し,さらに温度が上昇すると,それぞれの水酸化物の無水物は一段階で全量が酸化物と水に分解するものとする。各反応は 1200 ℃ 以下で生じ,生じた水は蒸発するため,この分が質量減少として測定でき,その結果から n の値を求めることができる。
3 つの沈殿乾燥試料について,温度を一定の速度で上昇させながら質量(初期質量に対する百分率)を測定すると,次のページの図 1 に示すような結果が得られた。温度上昇に伴って,ある温度になると質量減少が生じている。
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図1 3 つの沈殿乾燥試料の質量減少分析結果
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問 1 ア ,イ に入る適切な語句を,{ } の中からそれぞれ選択し答えよ。また,ウ に適切な語句を,エ に適切な化学式を答えよ。
問 2 図 1 (A)〜(C)に関連する元素の組み合わせとして,適切なものを,以下の(あ)〜(か)より選択せよ。
(あ) (A)—カルシウム,(B)—ストロンチウム,(C)—バリウム
(い) (B)—カルシウム,(C)—ストロンチウム,(A)—バリウム
(う) (C)—カルシウム,(A)—ストロンチウム,(B)—バリウム
(え) (A)—カルシウム,(C)—ストロンチウム,(B)—バリウム
(お) (B)—カルシウム,(A)—ストロンチウム,(C)—バリウム
(か) (C)—カルシウム,(B)—ストロンチウム,(A)—バリウム
問 3 オ ,カ に入る数値を有効数字 2 けたで求めよ。
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(b) 周期表の 6 族に属するクロムは,銀白色の光沢のある金属である。主要なクロム鉱石の成分の組成式は,F e C r 2 O 4 で示される。クロム鉱石からクロム酸塩を製造する一例として,F e C r 2 O 4 を,酸素が十分に存在し,水分のない条件で炭酸ナトリウムと加熱する方法があり,これによって,クロムは全量がクロム酸ナトリウムとなり,鉄は全量が酸化鉄(Ⅲ)となる。
ここで,pH が 2 以上で,クロム酸の水溶液中での挙動を考えてみよう。まず,クロム酸(H 2 C r O 4 )は,式(2)のように完全に電離する。生じたクロム酸水素イオン(H C r O 4 − )は,さらに式(3)のように一部が電離し,クロム酸イオン(C r O 4 2 − )を生じる。また,H C r O 4 − は式(4)に従って一部が二クロム酸イオン(C r 2 O 7 2 − )になる。また式(3)と式(4)から式(5)が導かれる。水溶液中では,主にこれら 3 種のクロムを含むイオンが存在し,平衡状態を保っている。
H 2 C r O 4 ⟶ H + + H C r O 4 − ( 2 )
H C r O 4 − ⇌ H + + C r O 4 2 − , K 1 = [ C r O 4 2 − ] [ H + ] [ H C r O 4 − ] = 1.25 × 10 − 6 m o l / L ( 3 )
2 H C r O 4 − ⇌ C r 2 O 7 2 − + H 2 O , K 2 = [ C r 2 O 7 2 − ] [ H C r O 4 − ] 2 = 60 L / m o l ( 4 )
2 H + + 2 C r O 4 2 − ⇌ C r 2 O 7 2 − + H 2 O ( 5 )
ただし,K 1 , K 2 はそれぞれ,式(3),式(4)の平衡定数である。
水に加えられた H 2 C r O 4 中のクロム原子の全物質量を水溶液の体積で割った値を [ C r ] T O T A L [mol/L] とすると,pH が 2 以上で,[ C r ] T O T A L は 3 種のイオンに含まれるクロム原子の水溶液中でのモル濃度の和であることから,[ C r ] T O T A L は K 1 , K 2 , [ H + ] , [ C r O 4 2 − ] を用いて,式(6)のように示すことができる。
[ C r ] T O T A L = [ C r O 4 2 − ] ( キ + ク × 1 K 1 + ケ × [ C r O 4 2 − ] K 1 2 ) ( 6 )
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図 2 は,横軸に pH,縦軸に log 10 [ C r ] T O T A L をとったものである。図中には線 A,線 B,線 C のうち 2 つの線にはさまれた領域が 3 つある。これは,pH や [ C r ] T O T A L に依存して,3 種のイオンのうち,各領域に表示されたイオンが最も多く存在することを示している。線 A は H C r O 4 − と C r O 4 2 − が,線 B は H C r O 4 − と C r 2 O 7 2 − が,線 C は C r O 4 2 − と C r 2 O 7 2 − が,同じ濃度になる線である。
図 2 における 3 つの線やその交点に関連する pH やイオン濃度を求めると,線 A 上での pH は − log 10 ( コ ) となる。この関係は [ C r ] T O T A L には依存しないので,線 A は縦の直線となる。また,線 B 上での [ C r 2 O 7 2 − ] は サ mol/L である。さらに,線 C 上での [ C r O 4 2 − ] は,[ H + ] を用いて式(7)のように示される。
[ C r O 4 2 − ] = シ × 1 [ H + ] 2 ( 7 )
線 A,線 B,線 C が交わる点 D では,3 種のイオン濃度が同じになり,このときの各イオンの濃度は,サ mol/L であり,[ C r ] T O T A L は ス mol/L となる。
図2 pH と log 10 [ C r ] T O T A L の関係
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問 4 下線部の化学反応式を示せ。
問 5 キ に入る正の整数,および ク ,ケ に入る適切な式を示せ。
問 6 コ 〜ス に入る数値を有効数字 2 けたで答えよ。ただし,シ には,単位をつけて答えよ。
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化学問題 Ⅱ
次の文章(a),(b)を読み,問 1〜問 7 に答えよ。解答はそれぞれ所定の解答欄に記入せよ。問題文中の L はリットルを表す。[ X ] は,物質 X のモル濃度を示し,単位は m o l / L である。数値は有効数字 2 けたで答えよ。
(a) 混ざり合わない 2 種類の溶媒(溶媒 1,溶媒 2 とする)を用いた,物質の抽出操作において,両溶媒に可溶な溶質は 2 つの溶媒間を移動する。移動が平衡に達したとき,両溶媒に溶けている溶質の濃度比 P は,定温条件下で一定値を示し,この値 P を分配係数と呼ぶ(図 1)。したがって,溶質が両溶媒中で同じ分子として存在するならば,両層に分配される溶質の物質量比は両溶媒の体積比によって決まる。
図1
では,溶質が両溶媒中で異なる状態で存在する場合はどうなるだろうか。例として,トルエンと水を溶媒として用いた,ある 1 価の弱酸 HA の分配を考える。弱酸 HA は水層中で式(1)のように解離する。300 K における HA の電離定数は 2.5 × 10 − 5 m o l / L である。
H A ⇌ A − + H + ( 1 )
また,トルエン層中に溶解した HA は水素結合により会合して,式(2)のように二量体 ( H A ) 2 を形成する。300 K における式(2)の平衡定数を K c [L/mol] とする。
2 H A ⇌ ( H A ) 2 ( 2 )
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0.10 L の緩衝液(pH 4.0)に n [mol] の弱酸 HA が溶解した水溶液を分液ろうとに入れ,さらに 0.10 L のトルエンを加え,よく振り混ぜたあと 300 K で十分な時間静置した。トルエン層と水層を分離し,トルエン層に移動した HA の物質量(a [mol])を測定した。その結果から,水層中の HA および A − の総物質量(b [mol] = n − a )を求めた。
水とトルエンはまったく混ざらないものとし,溶質の溶解による溶液の体積変化は無視できるとする。また,トルエン層中では HA は電離せず,水層中での会合も起きないとする。さらに,水層中で電離したイオン A − および H + はトルエン層に移動せず,同様に二量体は水層へ移動しないとする。pH 4.0 の水層中における電離していない HA の濃度を [ H A ] w とすると,水層中の A − の濃度は [ A − ] w = ア × [ H A ] w と表せる。また,トルエン層における単量体としての HA の濃度を [ H A ] t とすると,二量体 ( H A ) 2 の濃度は [ ( H A ) 2 ] t = イ と表せる。したがって下線部の実験により得られた HA の物質量 a と b の比は以下の式(3)により表せる。
a b = ウ ( 3 )
電離していない HA の単量体はトルエン層と水層の間を移動する。移動が平衡に達したとき,両層間の濃度比,すなわち分配係数 P H A = [ H A ] t [ H A ] w は定温において一定となる。P H A を用いて式(3)を整理すると式(4)の関係が得られる。
a b = 0.8 P H A + エ × K c P H A 2 [ H A ] w ( 4 )
水層中の HA および A − のうち,オ % が HA として存在することから,式(4)は式(5)のように表せる。
a b = 0.8 P H A + カ × K c P H A 2 b ( 5 )
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問 1 下線部において,物質量 a および b の値を求めるため,次の実験を行った。分離したトルエン層を蒸発皿に移した後,加熱することでトルエンだけを完全に蒸発させた。蒸発皿に残った物質の質量は m [g] であった。HA の分子量を M とし,物質量 b を求める数式を n , m , M を用いて表せ。ただし,緩衝液に用いた物質はトルエン層に移動せず,加熱による HA の蒸発や分解は起きないものとする。
問 2 ア と エ 〜カ に適切な数値を,また,イ と ウ に [ H A ] w ,[ H A ] t ,K c を用いた適切な式を,それぞれの解答欄に記入せよ。ただし,弱酸 HA の解離による水溶液の pH の変化は無視できるものとする。
問 3 様々な物質量の HA に対して下線部の操作を行ったときの,物質量 b と物質量比 a b の関係を図 2 に示した。図中の ● は各測定によって得られた実験値を表す。トルエン層と水層の間における HA の分配係数 P H A の値を答えよ。
図2
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問 4 以下の文章は,下線部の操作を緩衝液の代わりに純水を用いて HA の濃度を変えた実験について述べたものである。キ 〜ケ に適切な語句を,{ } の中からそれぞれ選択し答えよ。
水層中では,弱酸 HA の濃度増加により,HA の電離度は キ {大きくなる・小さくなる・変化しない} 。また,トルエン層中では HA の濃度増加により,HA の会合度(トルエン層に溶解したすべての分子 HA の数に対する二量体を形成した分子 HA の数の割合)は,ク {大きくなる・小さくなる・変化しない} 。したがって,分液操作前の HA の物質量 n の増加により,a b の値は ケ {大きくなる・小さくなる・変化しない} 。
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(b) 塩化ナトリウム(NaCl)を純水に溶解し,1.00 L の濃度 x [mol/L] の希薄溶液を調製した。図 3 に示すように,上部が開いた管内部の断面積が 4.0 c m 2 の U 字管の底部に水だけを通す半透膜を設置した。大気圧下で,調製した NaCl 水溶液から 100 mL を左側の管に,100 mL の純水を右側の管に入れた。温度 300 K において,U 字管に NaCl 水溶液および純水を入れた直後は,水面の高さは同じであった。その後,右の純水側から左の水溶液側に水が流入し,水面の高さが変化し始めた。変化が止まった際の水面の高さの差は 5.0 cm であった。そのとき,移動した水の体積は コ c m 3 である。ここで,水溶液の密度は純水のそれと等しいとし,高さ 1.0 cm の水柱の圧力は 100 Pa とする。
図3 半透膜を設置した U 字管における純水と水溶液間の水の移行現象
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問 5 コ に当てはまる適切な数値を答えよ。
問 6 調製した NaCl 水溶液の濃度 x [mol/L] を答えよ。なお,気体定数は 8.31 × 10 3 P a · L / ( K · m o l ) とする。
問 7 次の条件のみを変えた場合,水面の高さの差は条件を変える前(5.0 cm)と比べてどのように変化するか,(あ)〜(う)から選び,その記号を記入せよ。
(i) 温度を上げた場合
(あ) 短くなる
(い) 変化しない
(う) 長くなる
(ii) U 字管の断面積を大きくした場合
(あ) 短くなる
(い) 変化しない
(う) 長くなる
(iii) 等量のショ糖を水溶液と純水にそれぞれさらに添加した場合
(あ) 短くなる
(い) 変化しない
(う) 長くなる
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化学問題 Ⅲ
次の文章(a),(b)を読み,問 1〜問 6 に答えよ。解答はそれぞれ所定の解答欄に記入せよ。構造式は,記入例および図 1,図 2 にならって記せ。
(a) 図 1 に示すように,テレフタル酸ジクロリドと p -フェニレンジアミンを用いた縮合重合により,強度や耐熱性に優れた合成繊維が得られる。一般にこのような芳香族ポリアミド系合成繊維は ア 繊維と呼ばれ,防弾チョッキや防火服に用いられている。
図1
テレフタル酸ジクロリドのような,カルボニル基に塩素原子が結合した構造(− C O − C l )をもつ化合物を酸クロリドと呼ぶ。また,アミノ基(− N H 2 )をもつ化合物を第一級アミンと呼ぶ。酸クロリドは第一級アミンと速やかに反応し,イ の生成を伴ってアミド結合を形成することから,さまざまな低分子化合物の合成にも用いられる(図 2)。
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図2
第一級アミン A,B,C と酸クロリド D について,(あ)〜(う)の情報が得られている。
(あ) アミン A と酸クロリド D を反応させると,アセトアニリドが得られた。
(い) アミン B と酸クロリド D を反応させると,分子式 C 5 H 11 N O で表されるアミドが得られた。
(う) アミン C は不斉炭素原子を 1 つもち,分子式 C 9 H 11 N O 2 で表される芳香族化合物である。アミン C を酸クロリド D と反応させるとアミド E が得られた。アミド E を完全に加水分解すると,酢酸,メタノール,ベンゼン環をもつアミノ酸が得られた。
問 1 ア に当てはまる適切な語句と,イ に当てはまる適切な化学式を記入せよ。
問 2 アミン A および酸クロリド D の構造式をそれぞれ記せ。
問 3 アミン B として考えられる構造式をすべて記せ。
問 4 アミン C の構造式を記せ。ただし,鏡像異性体は区別しない。
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(b) 分子内に − C O − C l を 2 つもつ化合物を酸ジクロリドと呼ぶ。第一級アミン F と酸ジクロリド G を反応させると,アミド結合を 2 つもち,分子式 C 8 H 16 N 2 O 2 で表される化合物 H が得られた。化合物 H を部分的に加水分解することで,アミン F と,1 つのアミド結合と 1 つのカルボキシ基をもつ化合物 I が得られた。化合物 I とフェノールを用いて脱水縮合反応を行うと,分子式 C 12 H 15 N O 3 で表されるエステル J が得られた。化合物 F,G,H はいずれも不斉炭素原子をもたず,化合物 I,J は不斉炭素原子を 1 つもつ。
問 5 アミン F および酸ジクロリド G の構造式をそれぞれ記せ。
問 6 エステル J の構造式を記せ。ただし,鏡像異性体は区別しない。
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化学問題 Ⅳ
次の説明文と文章(a),(b)を読み,問 1〜問 6 に答えよ。解答はそれぞれ所定の解答欄に記入せよ。
単糖はアルドースとケトースの 2 種類に大別される。図 1 (i)にアルドースの一般式を示す。炭素数が 3 のアルドースである L-グリセルアルデヒドは分子内に不斉炭素原子を 1 つ含み,図 1 (ii)のように示される。太線(くさび)は紙面の手前側に向かう結合を,破線は紙面の奥側に向かう結合を示す。また,図 1 (iii)のような表記法もあり,左右方向の結合は紙面の手前側に向かう結合を,上下方向の結合は紙面の奥側に向かう結合を示すことにより,図 1 (ii)と同じ構造を表している。
図1 アルドースの一般式(i)と L-グリセルアルデヒドの表記法(ii)および(iii)
(a) グルコースをアルカリ溶液で処理すると,グルコースが反応し,不安定なエンジオール構造を含む反応中間体を介して,グルコース,アルドース A,フルクトースからなる平衡混合物となる(図 2)。
図2 グルコースの反応((1)〜(6)で示した炭素をそれぞれ C1〜C6 と定める)
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問 1 図 1 (i)における炭素数が 4(すなわち n = 2 )のアルドースが五員環構造を形成した場合,五員環構造の異性体の数を記せ。ただし,鏡像異性体は区別するものとする。
問 2 アルドース A の鎖状構造を,図 1 (iii)の表記法を使って記せ。ただし,− C H O が上となる向きで表記せよ。
問 3 二糖である B,C,D は,図 3 の(ア)〜(オ)いずれかの構造をもつ。情報(あ)〜(う)をもとに,二糖 B,C,D として適切な構造を(ア)〜(オ)から選び,それぞれ記号で答えよ。
(あ) B および D は銀鏡反応を示すが,C は銀鏡反応を示さない。
(い) C および D は,それぞれ 2 分子のアルドースが脱水縮合した二糖である。B は,1 分子のアルドースと 1 分子のケトースが脱水縮合した二糖である。
(う) D を構成する 2 種類のアルドースは,C1 炭素以外のある 1 箇所の炭素に結合する − O H の立体配置が異なっている。
図3
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(b) ある反応剤 X を糖に作用させると,図 4 の網かけ部分に示す部分構造が存在する場合にのみ,C—C 結合の切断が起こる。また,そうして得られる生成物に図 4 の網かけ部分で示される部分構造が含まれる場合には,さらに続けて C—C 結合の切断が起こる。たとえば,1 mol の L-グリセルアルデヒドを十分量の反応剤 X で処理すると,最終的には 2 mol のギ酸と 1 mol のホルムアルデヒドが生成する。グルコースおよびフルクトースをそれぞれ十分量の反応剤 X で処理したところ,いずれの場合も最終的には炭素数 1 の化合物のみが生成した。 このような手法により,反応剤 X で処理した最終生成物を分析することで,糖の構造を推定できる。
図4 反応剤 X を用いた反応
β 型グルコースの C1 炭素上の − O H が − O C H 3 に置き換わった化合物 E(図 5)は β 型の非還元糖である。化合物 E に十分量の反応剤 X を作用させると,図 4 に示す反応形式に従って,2 種類の化合物 F,G が得られた。化合物 F の分子量は化合物 G より大きかった。また,別の実験として,炭素数 5 のアルドースであり環
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構造をとる化合物 H について,C1 炭素上の − O H を − O C H 3 へと置換し,環構造をもつ β 型の化合物 I を得た。化合物 I に反応剤 X を作用させると,化合物 F のみが得られた。
図5 化合物 E の構造式
問 4 下線部について,グルコースおよびフルクトースが鎖状構造をとることを考慮して,全ての最終生成物の構造式と,それぞれの最終生成物に対応する物質量の比を記入例にならって解答欄に記せ。グルコースについては解答欄(Ⅰ),フルクトースについては解答欄(Ⅱ)に記入せよ。ただし,最終生成物の構造式は,物質量の比の大きいものから順に記入するものとする。物質量の比が同じ場合には順序を問わない。
問 5 化合物 G の構造式を記せ。
問 6 β 型の化合物 I として考えられる構造式を図 5 にならって全て記せ。ただし,炭素原子の位置を示す番号(1)〜(6)は省略して記入せよ。
第1問 冷やすと出てくる水和物、pH で入れかわるクロムのイオン 出題意図(京大) 問1 2族元素の性質や特性に関する基礎的理解を問う。問2 水和水の脱水および水酸化物の熱分解による質量変化を理解しているかを問う。問3 水和水をもつ水酸化物の沈殿を定量的に理解しているかを問う。問4 化学反応式を正しく記述できるかを問う。問5, 問6 溶液中でのイオンの電離平衡において、その定量的理解を問う。
京大の解答例との答え合わせ 京大が解答例を出している小問は、すべて京大の解答例と一致した(解答例が出ていない小問は、自分で解いて確かめたもの)
答えは京大の正解ではなく、自分で解いて、式とは別の計算で確かめたもの。
問題の読み方 (a) は 2 族元素(アルカリ土類金属)の水酸化物。冷やしたときに出る沈殿が水和物 だと、水和水の分だけ質量が増えるうえ、溶媒の水も減る。熱分析の質量減少(脱水 → 分解)から水和水の数を決めて、沈殿の質量を計算する。(b) はクロム鉱石からクロム酸ナトリウムをつくる反応と、クロムを含む 3 種のイオンの電離平衡。平衡定数の式を組み合わせて、図2 の境界線を求める。
問1 2 族の単体は、同じ周期の 1 族より金属結合が強く(価電子が 2 個)、融点が高く 、密度が大きい 。Ca・Sr・Ba・Ra はアルカリ土類金属 と呼ばれ、常温で水と反応して水素 H 2 を出す。
答え ア 高く イ 大きい ウ アルカリ土類金属 エ H 2
問2 加熱による減少:水酸化物 → 酸化物で失うのは H 2 O 1 個(18)。
- (B) は 1 段だけで 24.3%。18 74 = 24.3 % で C a ( O H ) 2 (水和水なし)。 - (A) は 2 段目が 6.77%。18 122 + 18 n = 0.0677 から n = 8 、1 段目 144 266 = 54.1 % も合う → S r ( O H ) 2 · 8 H 2 O 。 - (C) は 2 段目が 5.71%。18 171 + 18 n = 0.0571 から n = 8 、1 段目 144 315 = 45.7 % → B a ( O H ) 2 · 8 H 2 O 。
問3 C a ( O H ) 2 は水和物にならず、20 ℃ で 0.16 g 溶けるので、沈殿は 5.0 − 0.16 = 4.84 ≒ 4.8 g(オ)。
S r ( O H ) 2 · 8 H 2 O (式量 266)が x g 出るとすると、その中の S r ( O H ) 2 は 122 266 x 、水は 144 266 x 。残った溶液は飽和しているので
5.0 − 122 266 x 100 − 144 266 x = 0.82 100
これを解いて x ≒ 9.2 g(カ)。同じ計算で Ba は 2.3 g となり、問題の値と合う。
問4 Cr は +3 から +6 へ、Fe は +2 から +3 へ酸化され、酸素が受け取る。係数を合わせると
4 F e C r 2 O 4 + 8 N a 2 C O 3 + 7 O 2 ⟶ 8 N a 2 C r O 4 + 2 F e 2 O 3 + 8 C O 2
答え 4 F e C r 2 O 4 + 8 N a 2 C O 3 + 7 O 2 ⟶ 8 N a 2 C r O 4 + 2 F e 2 O 3 + 8 C O 2
問5 [ H C r O 4 − ] = [ C r O 4 2 − ] [ H + ] K 1 、[ C r 2 O 7 2 − ] = K 2 [ H C r O 4 − ] 2 。C r 2 O 7 2 − には Cr が 2 個あるので
[ C r ] T O T A L = [ C r O 4 2 − ] + [ H C r O 4 − ] + 2 [ C r 2 O 7 2 − ] = [ C r O 4 2 − ] ( 1 + [ H + ] · 1 K 1 + 2 K 2 [ H + ] 2 · [ C r O 4 2 − ] K 1 2 )
問6 線 A([ H C r O 4 − ] = [ C r O 4 2 − ] ):式(3)から [ H + ] = K 1 、p H = − log 10 K 1 。コ 1.3 × 10 − 6 。
線 B([ C r 2 O 7 2 − ] = [ H C r O 4 − ] ):式(4)から [ H C r O 4 − ] = 1 K 2 、サ 1 60 ≒ 1.7 × 10 − 2 。
線 C([ C r O 4 2 − ] = [ C r 2 O 7 2 − ] ):式(5)の平衡定数 K 2 K 1 2 を使うと [ C r O 4 2 − ] = K 1 2 K 2 · 1 [ H + ] 2 。シ ( 1.25 × 10 − 6 ) 2 60 ≒ 2.6 × 10 − 14 m o l 3 / L 3 。
点 D では 3 種とも 1 60 mol/L で、[ C r ] T O T A L = 1 + 1 + 2 60 ≒ 6.7 × 10 − 2 (ス)。
答え コ 1.3 × 10 − 6 サ 1.7 × 10 − 2 シ 2.6 × 10 − 14 m o l 3 / L 3 ス 6.7 × 10 − 2
第2問 水とトルエンに分かれる弱酸、U 字管で上がる水面 出題意図(京大) 問1 物質量についての基礎的理解力を問う。問2, 問3 電離や化学平衡を理解し定量的に考察することができるかを問う。問4 弱酸の濃度変化に伴う電離度や会合度の変化を理解し、分配される物質量比について定性的に考えることができるかを問う。問5 浸透圧を表す基本的な関係式を理解しているかを問う。問6 浸透圧の関係式から物質量や溶液の濃度を導出できるかを問う。問7 浸透圧の関係式から条件の変化が圧力にどのような影響を与えるかを正しく理解できるかを問う。
京大の解答例との答え合わせ 京大が解答例を出している小問は、すべて京大の解答例と一致した(解答例が出ていない小問は、自分で解いて確かめたもの)
答えは京大の正解ではなく、自分で解いて、式とは別の計算で確かめたもの。
問題の読み方 (a) 分配係数は「同じ分子どうし」の濃度比。HA は水層では一部が A − に、トルエン層では一部が二量体 ( H A ) 2 になるので、測れる物質量の比 a / b は分配係数そのものではない 。電離と会合を式に入れて、a / b と b の関係を直線の形にし、グラフから分配係数を読む。(b) は浸透圧 Π = c R T 。NaCl はイオン 2 個に分かれることと、水が移ってうすまることに注意する。
問1 トルエン層の HA(単量体も二量体も)を蒸発皿に残すと、その質量 m はトルエン層の HA の総質量。a = m M で、b = n − a = n − m M 。
問2 水層:K a = [ A − ] [ H + ] [ H A ] で [ H + ] = 1.0 × 10 − 4 なので [ A − ] w = 2.5 × 10 − 5 1.0 × 10 − 4 [ H A ] w = 0.25 [ H A ] w (ア 0.25)。
トルエン層:式(2)から [ ( H A ) 2 ] t = K c [ H A ] t 2 (イ)。HA の分子数で数えると二量体は 2 倍。体積は等しいので
a b = [ H A ] t + 2 K c [ H A ] t 2 [ H A ] w + 0.25 [ H A ] w ( ウ )
[ H A ] t = P H A [ H A ] w を入れると a b = 0.8 P H A + 1.6 K c P H A 2 [ H A ] w (エ 1.6)。
水層の HA の割合は 1 1.25 = 80 % (オ)。[ H A ] w = 0.8 b 0.10 = 8 b なので、カ は 1.6 × 8 = 12.8 ≒ 13 。
答え ア 0.25 イ K c [ H A ] t 2 ウ [ H A ] t + 2 K c [ H A ] t 2 1.25 [ H A ] w エ 1.6 オ 80 カ 13
問3 式(5)は b について直線:切片 0.8 P H A 、傾き 13 K c P H A 2 。図2 の 3 点 ( 1 , 2 ) 、( 3 , 3 ) 、( 5 , 4 ) (b は × 10 − 4 )を通る直線の切片は 1.5。0.8 P H A = 1.5 から P H A = 1.875 ≒ 1.9 。
問4 純水では濃度が上がると、弱酸の電離度は小さくなる (α ≒ K a / c )。トルエン層では濃いほど 2 つが出会いやすく、会合度は大きくなる 。どちらもトルエン側に多く移る向きにはたらくので、a / b は大きくなる 。
答え キ 小さくなる ク 大きくなる ケ 大きくなる
問5 左が上がった分と右が下がった分は同じ(断面積が同じ)で、差 5.0 cm なら左が 2.5 cm 上がる。移った水は 4.0 × 2.5 = 10 c m 3 。
問6 高さの差の水柱の圧力が浸透圧:Π = 5.0 × 100 = 500 Pa。左の溶液は 110 mL にうすまり、NaCl は N a + と C l − の 2 つに分かれるので
500 = 2 × 0.100 x 0.110 × 8.31 × 10 3 × 300
問7 (i) 温度を上げると Π = c R T が大きくなり、差は長くなる(う)。
(ii) 断面積を大きくすると、同じ高さの差でも多くの水が移り、左の溶液がよりうすまって Π が小さくなる。差は短くなる(あ)。
(iii) 両側に同じ量のショ糖を入れると、左(水が多い)の方がショ糖の濃度が低い。ショ糖の分の浸透圧は右へ水を引く向きにはたらき、差は短くなる(あ)。
第3問 酸クロリド + アミン → アミド + HCl:分子式の足し引きで決める 出題意図(京大) 問1 合成高分子化合物に関する基礎的理解を問う。問2, 問3, 問4 酸クロリドと第一級アミンの反応を題材とし、有機化合物の構造や反応に関する基礎的理解を問うとともに、与えられた情報から有機化合物の構造を決定し、その分子構造を正しく記述する力を問う。問5, 問6 有機化合物の反応前後における分子式の変化から有機化合物の構造を決定するとともに、その分子構造を正しく記述する力を問う。
京大の解答例との答え合わせ 京大が解答例を出している小問は、すべて京大の解答例と一致した(解答例が出ていない小問は、自分で解いて確かめたもの)
答えは京大の正解ではなく、自分で解いて、式とは別の計算で確かめたもの。
問題の読み方 酸クロリド R 1 − C O − C l と第一級アミン H 2 N − R 2 は、H C l がとれてアミド R 1 − C O − N H − R 2 になる。逆にアミドを加水分解すると、カルボン酸とアミンにもどる。分子式の差は「何がくっついて何が抜けたか」 をそのまま表すので、分子式を足し引きして部品を決めていく。
問1 芳香族ポリアミドはアラミド 繊維。アミド結合ができるとき H C l が出る(イ)。
問2 アセトアニリドは C H 3 − C O − N H − C 6 H 5 。アミド結合で切ると、酸クロリド側は C H 3 C O − 、アミン側は − N H − C 6 H 5 。D は塩化アセチル C H 3 − C O − C l 、A はアニリン C 6 H 5 − N H 2 。
答え A:アニリン C 6 H 5 − N H 2 、D:塩化アセチル C H 3 − C O − C l
問3 B と D からのアミドは C H 3 C O − N H − R で C 5 H 11 N O 。C H 3 C O N H (C 2 H 4 N O )を引くと R は C 3 H 7 。プロピル基とイソプロピル基の 2 通りで、B は C H 3 C H 2 C H 2 N H 2 と C H 3 C H ( N H 2 ) C H 3 。
答え C H 3 − C H 2 − C H 2 − N H 2 と C H 3 − C H ( N H 2 ) − C H 3
問4 E を完全に加水分解すると、酢酸(D の部分)、メタノール、ベンゼン環のアミノ酸が出る。メタノールが出るのは、C にメチルエステル − C O O C H 3 があるから。C は C 9 H 11 N O 2 で、ベンゼン環・アミノ基・C O O C H 3 をもち、不斉炭素が 1 つ。C 6 H 5 − C H ( N H 2 ) − C O O C H 3 (フェニルグリシンのメチルエステル)が合う(C 6 H 5 +C H +N H 2 +C O O C H 3 で C 9 H 11 N O 2 )。
問5 H はアミド結合を 2 つもつ C 8 H 16 N 2 O 2 。酸ジクロリド G の両端に F が 1 つずつつく。H を部分的に加水分解すると F と I(アミド 1 つ・カルボキシ基 1 つ)が出るので、F は 2 つとも同じアミン。
J(C 12 H 15 N O 3 )は I とフェノールのエステルなので、I = J + H 2 O − C 6 H 6 O = C 6 H 11 N O 3 。H はさらに F をもう 1 つアミドでつないだもので、H = I + F − H 2 O 。C 8 H 16 N 2 O 2 から F = C 2 H 7 N (エチルアミン)。
G の炭素は 8 − 2 × 2 = 4 個。H は不斉炭素をもたないが、I は 1 つもつ。中央の炭素に 2 つの同じ C O N H E t がついていると不斉にならず、片方が C O O H になると不斉になる。だから中央は C H ( C H 3 ) :G は C l − C O − C H ( C H 3 ) − C O − C l (メチルマロン酸ジクロリド)。
答え F: C H 3 − C H 2 − N H 2 、G: C l − C O − C H ( C H 3 ) − C O − C l
問6 I は H O O C − C H ( C H 3 ) − C O − N H − C H 2 C H 3 。カルボキシ基がフェノールとエステルをつくって
C 6 H 5 − O − C O − C H ( C H 3 ) − C O − N H − C H 2 − C H 3
答え C 6 H 5 − O − C O − C H ( C H 3 ) − C O − N H − C H 2 − C H 3
第4問 糖の炭素の鎖を 1 本ずつ切っていく 出題意図(京大) 問1, 問2, 問3 糖の立体構造や異性化反応について、正しく理解し記述する力を問う。また、与えられた多面的な情報を統合的に整理し、化学構造を推定する論理的思考力を問う。問4, 問5, 問6 糖を題材に、与えられた反応様式を適切に当てはめて運用し、正しく反応生成物を導くことができるかを問う。また、反応生成物の分子構造の情報をもとに論理的に反応出発物の分子構造を推定し、立体を区別して正しく記述する力を問う。
京大の解答例との答え合わせ 京大が解答例を出している小問は、すべて京大の解答例と一致した(解答例が出ていない小問は、自分で解いて確かめたもの)
答えは京大の正解ではなく、自分で解いて、式とは別の計算で確かめたもの。
問題の読み方 糖は炭素の鎖に OH が並んだ分子。立体の書き方(図1 (iii))では、横の線が手前、縦の線が奥。(a) はアルカリ中でグルコースがエンジオールを通ってマンノース・フルクトースに変わること、(b) はとなり合う OH をもつ炭素の結合を切る反応 (過ヨウ素酸による開裂と同じ形)で、糖を小さな化合物に分解して構造を推定する。
問1 炭素数 4 のアルドース C H O − C H O H − C H O H − C H 2 O H が五員環をつくると、C4 の OH が C1 と結合し、環は C1〜C4 と O。不斉炭素は C1(新しくできる)・C2・C3 の 3 つ。鏡像異性体も区別するので 2 3 = 8 。
問2 エンジオールでは C1・C2 が二重結合でつながり、C2 の立体が消える。もどるとき C2 の OH がグルコースと逆向きになったものがアルドース A(マンノース)。図1 (iii) の書き方で、上から C H O 、H O − C − H 、H O − C − H 、H − C − O H 、H − C − O H 、C H 2 O H 。
答え マンノース:上から C H O 、 H O − C − H 、 H O − C − H 、 H − C − O H 、 H − C − O H 、 C H 2 O H
問3 銀鏡反応を示すには、どちらかの糖の C1(ケトースなら C2)がグリコシド結合に使われず、開いて還元性の基になれる必要がある。
- (ア) グルコース 2 つが C1 どうしで結合 → 還元性なし、アルドース 2 つ → C 。 - (イ) グルコースの C1 とフルクトースの C2 で結合(スクロース)→ 還元性なし。 - (オ) グルコースの C1 とフルクトースの C6 で結合、フルクトースの C2 が空いている → 還元性あり、アルドース+ケトース → B 。 - (ウ) グルコース 2 つ、(エ) ガラクトース(C4 の OH が逆)とグルコース。どちらも片方の C1 が空いていて還元性。2 種類のアルドースが C4 だけ違うのは (エ) → D 。
問4 規則(図 4 の 6 つの反応を、この問題の糖の部分構造に当てはめたもの):となり合う炭素がどちらも OH かカルボニルをもつと切れ、切れた端の炭素は 1 段酸化される(C H 2 O H → H C H O 、C H O H → C H O 、C H O → H C O O H 、ケトンの両側が切れると C O 2 )。
グルコース(鎖状):C1〜C6 のすべての結合が切れ、C1〜C5 はギ酸、C6 はホルムアルデヒド。(Ⅰ) H C O O H : H C H O = 5 : 1 。
フルクトース:C1 と C6 は H C H O 、C2(C=O)は C O 2 、C3〜C5 は H C O O H 。(Ⅱ) H C O O H : H C H O : C O 2 = 3 : 2 : 1 。
答え (Ⅰ) H C O O H : H C H O = 5 : 1 (Ⅱ) H C O O H : H C H O : C O 2 = 3 : 2 : 1
問5 E は環のまま(C1 は O C H 3 、C5 は環の O につながる)。OH が隣り合うのは C2–C3–C4 だけなので、C2–C3 と C3–C4 が切れ、C3 が両側から切られてギ酸になる。残り(C1・C2・C4・C5・C6)はつながったままの大きな化合物 F。分子量の小さい G はギ酸 H − C O − O H 。
問6 ペントースの H が五員環(フラノース)をとると、環は C1〜C4 と O、C5 は環の外の C H 2 O H 。β 型の I に X を作用させると C2–C3 だけが切れ、C1(O C H 3 )・C2・C3・C4・C5 がつながった化合物になる。これが F と同じになるには、C1 の向き(β)と、C4(E の C5 にあたる)の向きが E と同じであればよい。C2・C3 の向きは切れて残らないので自由で、2×2=4 通り。
答え 五員環(フラノース)の β 型メチルグリコシドで、環の外の C H 2 O H (C4)と O C H 3 (C1)が図5 と同じ向き、C2・C3 の O H の向きが 4 通り(上上・上下・下上・下下)の 4 つ