化 学 問 題
(解答はすべて化学解答用紙に記入すること)
【注意】
1. 必要があれば次の数値を用いよ。
H の原子量=1.0,C の原子量=12.0,N の原子量=14.0,O の原子量=16.0,Al の原子量=27.0,ファラデー定数 C/mol
2. 特にことわらない限り,構造式は下の例にならって示すこと。

3. 字数制限のある解答は,下に示す例にならって書くこと。

第1問
〔1〕 以下の文章を読み,問 1〜問 4 に答えよ。
地殻に最も多く含まれている元素は酸素 O である。酸素は,鉱物中の酸化物や,海水や大気の主たる成分元素の 1 つである。O₂ は酸化剤としてはたらき,化石燃料と反応してエネルギーを放出するとともに,①二酸化炭素を生成する。また,大気を用いる内燃機関では②窒素酸化物も生成する。これらは多量に放出されれば,地球温暖化や大気汚染の原因となり得る。
地殻の成分元素として二番目に多く含まれているのはケイ素 Si であり,三番目に多く含まれているのはアルミニウム Al である。いずれも酸化物の SiO₂ や Al₂O₃ としてセメントの原料となるほか,SiO₂ はガラスの原料としても用いられ,単体の Si は③半導体の材料となっている。単体の Al は,ボーキサイトから得られる④Al₂O₃ から電気化学的な還元によって製造される。その製造には膨大な電力消費を伴うため,飲料用缶などのリサイクルによる再利用が進んでいる。
地殻の成分元素として四番目に多く含まれているのは鉄 Fe である。主成分が Fe₂O₃ である赤鉄鉱と主成分が Fe₃O₄ である磁鉄鉱などを多く含む⑤鉄鉱石を,コークスから生成した一酸化炭素で還元することによって,銑鉄(せんてつ)が得られる。
問 1 下線部①の二酸化炭素について,以下の (1),(2) の設問に答えよ。
(1) 二酸化炭素の電子式を書け。
(2) 二酸化炭素に関連して,以下の文章の ア に適切な元素名を入れ,イ と ウ には適切な化学式を入れよ。
二酸化炭素は生物系の炭素循環において,光合成によって還元され,糖などの炭水化物に変換される。また石灰石や大理石などの主成分として ア イオンの炭酸塩が天然に存在する。日本の河川水は一般にほとんどが軟水であるのに対して,地下水や温泉水は ア イオンやマグネシウムイオンなどを多く含む硬水が多い。二酸化炭素を多く含む地下水が石灰岩を徐々に侵食すると塩である イ が溶解した水溶液となり,それが滴り落ちたときに二酸化炭素が空気中に放出され,ウ が析出して鍾乳石や石筍(せきじゅん)が形成し,鍾乳洞ができる。
問 2 下線部②の窒素酸化物において,大気汚染物質が生成する原因となるのは,おもに一酸化窒素 NO や,刺激臭のある二酸化窒素 NO₂ である。これらに関連する以下の (1)〜(4) の設問に答えよ。
(1) NO は空気中で酸化される。この反応式を示せ。
(2) NO₂ は単体の銅と濃硝酸から生成する。この反応式を示せ。
(3) NO₂ は O—N—O の結合を有し,窒素原子上に不対電子をもつ。常温において赤褐色の NO₂ ガスを十分に加圧するとほぼ無色となる。この無色の気体は,すべての原子において希ガス原子と似た電子配置をもつ分子から成る。このときに生成する分子の電子式を書け。
(4) NO₂ を含めたいくつかの分子の立体構造に関する以下の文章の空欄 エ 〜 ク に適切な語句や化学式を入れよ。
電子対間の反発は分子の立体構造に影響する。例えばメタン CH₄ とアンモニア NH₃ と水 H₂O の H—X—H(X = C,N,O)の角度が CH₄ > NH₃ > H₂O となるのは,エ 電子対と オ 電子対の反発が エ 電子対同士の反発より大きいためである。この影響に加えて,不対電子と電子対の反発は電子対間の反発より小さいことを考慮すると,亜硝酸イオン NO₂⁻,二酸化窒素 NO₂,および NO₂ が電子を 1 つ失った NO₂⁺ における O—N—O の角度の順は,カ > キ > ク となる。
問 3 下線部③に関連した以下の文章の空欄 ケ 〜 ソ にあてはまる適切な語句や数字を入れよ。
金属原子の ケ エネルギーは一般に小さいため,金属元素は陽性が強い。そのため,金属原子が規則正しく配列した結晶では,その価電子は特定の原子内にはとどまらず,結晶内のすべての原子に共有される形で結晶中を動き回ることができる。このような価電子を コ 電子といい,サ 結合や電気伝導性に関与している。つぎに,周期表の第 シ 族の元素である Si の結晶中では,ス 個の価電子をもつ Si 原子の周りに,隣接する 4 つの Si 原子が共有結合している。そこに微量の P 原子を混入すると,セ 個の価電子をもつ P 原子の周りにも隣接する 4 つの Si 原子が共有結合し,そこで余った ソ 個の価電子が コ 電子と同じように電気を運ぶはたらきをして,n 型半導体としての性質を示す。
問 4 下線部④,⑤の Al と Fe の製造法や性質に関連した以下の (1)〜(3) の設問に答えよ。
(1) Al と Fe₂O₃ との混合物(テルミット)に点火すると,激しく反応して融解した鉄 Fe が生じるため,鉄道のレールなどの溶接に利用される。このときの Al と Fe₂O₃ の熱化学方程式を記せ。ただし,Al₂O₃ と Fe₂O₃ の生成熱はそれぞれ 1676 kJ/mol と 824 kJ/mol である。
(2) 1000 ℃の高温で融解した氷晶石 Na₃AlF₆ に Al₂O₃ を溶かして,炭素電極を用いて融解塩(溶融塩)電解することにより,Al₂O₃ から単体の Al が製造されている。2.00 A の電流で,陰極で 108 g の Al を得るために要する時間(秒)を有効数字 3 桁で答えよ。また陽極で発生する主な気体の 1 つを答えよ。
(3) Fe は,Al と Fe₂O₃ の混合物の反応により容易に得られるが,Al は,Al₂O₃ と Fe の混合物の反応では得られない。この理由を,Al と Fe の性質を比べて 30 字以内で述べよ。
第2問
〔2〕 モルヒネおよびモルヒネ塩酸塩は室温で固体であり,モルヒネ塩酸塩の水溶液は医療において麻酔・鎮痛薬として用いられている。以下の文章を読み,問 1〜問 6 に答えよ。
モルヒネを水に溶かすと式①に示す電離平衡に達し,その水溶液は弱塩基性を示す。
(式中では,水素イオン H⁺ が結合していないモルヒネは Mor,H⁺ が結合したモルヒネは Mor–H⁺ と略記する)
モルヒネは,分子中の窒素原子がもつ非共有電子対を H⁺ に与えて共有結合を形成し,陽イオンになる。
式①の電離平衡の平衡定数を とすると,化学平衡の法則から, は式②のように表される。
この電離平衡の中で,水のモル濃度 [H₂O] は他の物質の濃度よりも十分大きく一定とみなせるので,モルヒネの電離定数 は式③のように表される。
問 1 モルヒネの構造式として正しいものは,つぎの A〜D のうちどれか,記号で答えよ。また,選んだ理由を示せ。

問 2 ア,イ を,[Mor],[H₂O],[Mor–H⁺],[OH⁻] のすべて,あるいはいずれかを用いて示せ。ただし,[Mor],[H₂O],[Mor–H⁺],[OH⁻] は,それぞれ水溶液中の Mor,H₂O,Mor–H⁺,OH⁻ のモル濃度 (mol/L) である。
問 3 式①の電離平衡状態にあるモルヒネ水溶液に対する (i)〜(v) の操作と結果の関係について,常に正しいものをすべて選び記号で答えよ。
(i) 塩化水素を通じると,Mor–H⁺ の濃度は上昇する。
(ii) 水酸化ナトリウムを加えると,Mor–H⁺ の濃度は低下する。
(iii) 水で 10 倍に希釈すると,Mor–H⁺ の濃度は 10 分の 1 になる。
(iv) モルヒネを加えると,pH は大きくなる。
(v) モルヒネ塩酸塩を加えると,pH は大きくなる。
問 4 モルヒネ塩酸塩を水に溶かすと,酸性,中性,塩基性のうち,いずれの液性を示すか答えよ。また選んだ理由をイオン反応式を用いて答えよ。
以下の実験を 25 ℃で行った。ただし,25 ℃における水溶液中のモルヒネの電離定数 は mol/L,水のイオン積 は mol²/L² とする。また,モルヒネの窒素原子以外の部分および粉末 X 中のモルヒネ以外の物質は,水溶液の pH を変化させないものとする。なお,必要があれば, を使ってもよい。
問 5 モルヒネを含む粉末 X (0.300 g) を純水に溶かして 3.00 L の水溶液 Y を調製したところ,その pH は 8.00 であった。
(1) 水溶液 Y 中のモルヒネの濃度 [Mor] を有効数字 2 桁で求めよ。また,解答欄には計算過程も示せ。
(2) 粉末 X 中のモルヒネの物質量を有効数字 2 桁で求めよ。また,解答欄には計算過程も示せ。
問 6 ヒトの血液の pH は約 7.4 である。ヒトの血液の pH に合わせた注射液をつくるために,ある緩衝液にモルヒネを溶解させ,pH = 7.40 のモルヒネ水溶液を調製した。この水溶液中における [Mor–H⁺]/[Mor] の値を有効数字 2 桁で求めよ。また,解答欄には計算過程も示せ。
第3問
〔3〕 A,B,C,D は,いずれも炭素,水素,酸素からなる同じ分子式をもつ分子量 300 以下のベンゼン環を含む芳香族化合物である。これらの分子の構造を決定するために,以下の操作を行った。
図 1 に示すように,A および B を酸性水溶液中で加水分解すると共通の芳香族化合物 E を,また C および D を同様に加水分解すると共通の芳香族化合物 F を生成した。E および F を酸化剤と反応させると共通の化合物 G を生成し,G を加熱して分子内脱水縮合させることで分子量 148 の化合物 H を得た。
(a)〜(f) の文章を読み,問 1〜問 6 に答えよ。
(a) 1.92 mg の A を完全燃焼させると二酸化炭素 5.28 mg,水 1.44 mg が生成した。
(b) 等しい物質量の E とアニリンの混合物から脱水縮合によって得られる化合物の元素分析の結果は,質量百分率で炭素 79.59 %,水素 6.20 %,窒素 6.63 %,酸素 7.58 % であった。一方,F とアニリンは反応しなかった。
(c) A〜H のすべての化合物はアンモニア性硝酸銀水溶液を用いる銀鏡反応を示さなかった。
(d) ①1 mol の E,F,G は,エーテル中で十分な量のナトリウムと反応し,それぞれ 0.5 mol,0.5 mol,1 mol の水素を発生した。E と G のナトリウムとの反応生成物はいずれも水に溶解したが,F の反応生成物は水と反応して F に戻った。
(e) A から E への加水分解で生成した脂肪族化合物 I はヨードホルム反応を示したが,B から E への加水分解で生成した脂肪族化合物 J はヨードホルム反応を示さず,また過マンガン酸カリウムとも反応しなかった。
(f) C および D の加水分解で F とともに生成した化合物のうち,D から得られた化合物にのみ枝分かれのある炭素鎖が存在した。
問 1 (a) の結果から化合物 A の分子式を示せ。
問 2 (b) の結果から化合物 E の分子式を示せ。解答欄には導出過程も示せ。
問 3 (a)〜(d) の結果から化合物 E,F,G,H の構造式を示せ。
問 4 (d) の下線部①で G とナトリウムとの反応の反応式を構造式を用いて示せ。
問 5 (a)〜(e) の結果から化合物 A と B の構造式を示せ。
問 6 (a)〜(f) の結果から化合物 C と D の構造式を示せ。

第4問
〔4〕 以下の文章を読み,問 1〜問 6 に答えよ。
【Ⅰ】
半導体の洗浄には,不純物である金属イオンをほとんど含まない脱イオン水や過酸化水素水が用いられる。
問 1 この脱イオン水は,大量に利用できる工業用水からイオン交換樹脂で金属イオンを除去してつくられる。ここで用いるイオン交換樹脂は,以下のように,架橋型ポリスチレンから作成される。
まず,スチレン CH₂=CH(C₆H₅) 41.6 g および少量の架橋剤を共重合させて架橋型ポリスチレンを合成した。次に,濃硫酸を反応させて,①スチレン由来のフェニル基の 58.0 % がスルホン化されたイオン交換樹脂を作成した。なお,重合は完全に進行し,架橋剤由来の部位はスルホン化されないものとする。
(1) 塩化ナトリウム水溶液中のナトリウムイオンを,下線部①のイオン交換樹脂に吸着させることで除去する。このとき,水素イオン H⁺ はナトリウムイオンに完全に交換されるものとする。この樹脂を用いて 50.0 mmol/L の塩化ナトリウム水溶液からナトリウムイオンをすべて除去するとき,最大で何 L の水溶液が処理できるか,有効数字 3 桁で求めよ。解答欄には計算過程も記せ。
(2) 金属イオンを同定するため,イオン交換樹脂を充填したカラムに工業用水を通して金属イオンを吸着させ,そのカラムを水洗して流出液をすべて回収した。流出液に〔Na,K,Ca,Fe,Cu,Zn,Ag,Pb〕の金属元素のイオンが含まれているとき,以下の系統分析 (a)〜(c) で得られる沈殿の化学式を〔 〕の中から適切な元素を用いて記せ。また,(d) で同定される金属イオンのイオン式を〔 〕の中から適切な元素を用いて記せ。
(a) 希塩酸を加えると白色沈殿が生じたためろ過で回収した。この沈殿は熱水に溶解した。
(b) (a) のろ液に硫化水素を通じると黒色沈殿が生じた。
(c) (b) のろ液を煮沸して硫化水素を追い出し,硝酸を加えて加熱後,塩化アンモニウムとアンモニア水を加えると赤褐色の沈殿が生じた。
(d) (c) のろ液の炎色反応を調べると黄色炎を呈した。
問 2 洗浄に用いる過酸化水素水の濃度を求めるため,脱イオン水で 20 倍に希釈した。この溶液 10 mL に,硫酸で酸性にした 0.040 mol/L の二クロム酸カリウム水溶液を加えていくと,5.0 mL 加えたところで過酸化水素がすべて反応した。この過酸化水素水のモル濃度を有効数字 2 桁で求めよ。解答欄には反応式と計算過程も記せ。
【Ⅱ】
陰イオン交換膜は陰イオンを,陽イオン交換膜は陽イオンを選択的に透過するため,イオン交換膜は②水酸化ナトリウムの製造や③海水の濃縮・淡水化などに用いられる。


問 3 下線部②は,図 1 の装置を用いた塩化ナトリウム水溶液の電気分解で行われる。各電極で起こる反応式と全体の反応式をそれぞれ記せ。
問 4 図 1 の装置では,陽イオン交換膜がない場合より水酸化ナトリウムを効率よく生成できる。その理由を,反応式を用いて説明せよ。
問 5 下線部③では,工業的に図 2 のような装置が用いられ,イオン交換膜で仕切られた各室に海水を満たして電圧をかけることで海水の濃縮・淡水化を行う。A と B から回収されるそれぞれの水溶液の塩濃度を海水と比較するとどちらが高いか答えよ。また,その理由も説明せよ。
問 6 【Ⅰ】のように,イオン交換樹脂のすべてのイオンが交換されると,それ以降イオン交換樹脂は使用できない。一方,図 2 の装置の C 室に陽および陰イオン交換樹脂を充填すると,イオン交換樹脂を連続的に使用できるため,水溶液中のイオンを連続的に除去できる。連続的に使用できる理由を説明した下記の文章の空欄 ア から カ に適切な語句を〔 〕から選び記入せよ。
ア に吸着したイオンは水の イ で生じたイオンと ウ され,エ を通って オ されて排出されるため,ア が カ されるから。
〔陽極,電極,陰極,加水分解,海水,交換,反応,再生,電気分解,濃縮,希釈,酸化,還元,イオン交換樹脂,イオン交換膜〕