第1問
次の〔Ⅰ〕〜〔Ⅳ〕の文章を読み,以下の問(1)〜(10) に答えよ。
〔Ⅰ〕 細胞の機能は,さまざまな (a)<u>細胞小器官</u>のはたらきにより維持されている。核は に囲まれており,この には多くの分子が通過する多数の がある。核の内部には,染色体やリボソーム RNA などが合成される 1〜数個の がある。
問(1) 文章内の 〜 に適切な語句を記入せよ。
問(2) 下線部 (a) の細胞小器官について,以下の①〜④の中から<u>誤っているもの</u>を 1 つ選び,その番号を記せ。
① 液胞は植物細胞で発達しており,内部が細胞液で満たされ,代謝産物の貯蔵や浸透圧の調節などに機能する。
② ゴルジ体はリボソームで合成されたタンパク質を細胞外に輸送し,タンパク質に糖鎖を付加する。
③ リソソームはゴルジ体から生じ,分解酵素を含んでおり,オートファジーに関与する。
④ 葉緑体は藻類と植物細胞にあり,内部には袋状のチラコイドが積み重なっており,チラコイドが積み重なった構造をストロマという。
問(3) 細胞小器官は,一重の生体膜を持つ構造体と二重の生体膜を持つ構造体に分けられる。一重の生体膜を持つ構造体の名称を 3 つ記せ。
〔Ⅱ〕 細胞骨格は,細胞内の繊維状の構造で,細胞の形の形成,細胞小器官の動き,細胞分裂時の染色体の動き,細胞質分裂,細胞接着,筋収縮などの機能に役割を果たす。主な細胞骨格には,アクチンフィラメント,,(b)<u>微小管</u>がある。
微小管は,間期には核の近くにある を起点として細胞全体に広がっているが,分裂期には とともに紡錘体の形成にはたらく。紡錘体の微小管は,分裂期において染色体に形成される というタンパク質複合体を介して染色体に結合する。
問(4) 文章内の 〜 に適切な語句を記入せよ。
問(5) 下線部 (b) の構造について,構成因子の名称とともに概略図を示した上で,2 行以内で説明せよ。
〔Ⅲ〕 細胞周期は,G1 期(DNA 合成準備期),S 期(DNA 合成期),G2 期(分裂準備期),M 期(分裂期)からなる。M 期はさらに前期,中期,後期, からなる。
S 期の DNA の複製では,DNA の 2 本鎖のそれぞれが新しく合成された鎖と結合し,2 組の 2 本鎖になる。このうち一方の鎖は,複製された DNA である 2 本鎖 DNA が娘細胞に受け継がれる。このような複製を という。
この過程では,まず によって, とよばれる DNA の特定の部分が開裂する。さらに,プライマーという短い RNA 鎖が結合し,その 3′ 末端側に, によって DNA のヌクレオチド鎖が伸長する。連続的に合成されるヌクレオチド鎖を といい,不連続に合成される鎖を という。 では,複数の短いヌクレオチド鎖が断続的に合成される。これは, とよばれる。プライマーが除去された後,切れ目は という酵素で連結される。
問(6) 文章内の 〜 に適切な語句を記入せよ。
問(7) DNA を構成する塩基のうち,アデニンの割合が 26 % のとき,グアニンの割合は何 % か,その数値を記せ。
問(8) 増殖している細胞集団を対象として,DNA と結合して蛍光を発する色素で染色し,それぞれの細胞が発する蛍光の強さを測定した。細胞当たりの DNA 量と細胞数の関係を図 1 に示した。このグラフについて,以下の (i)〜(iii) の問いに答えよ。
(i) 細胞周期の S 期,G2 期の細胞は,グラフのどの領域に含まれるか,それぞれ A〜C の記号で答えよ。
(ii) この細胞集団では,どの細胞周期が最も長いと考えられるか,細胞周期の名称を記せ。
(iii) 細胞質分裂に異常が生じた場合,図 1 はどのようなグラフになると考えられるか,変化したグラフの特徴を,その理由とともに 2 行以内で説明せよ。

図 1
〔Ⅳ〕 真核生物では,核の DNA は染色体に分納されている。ヒトの細胞では,通常 本の常染色体と 2 本の性染色体がある。染色体では,(c)<u>DNA はタンパク質に結合して,最も基本的な単位である という小さく折りたたまれた構造</u>をとっており,さらにこれらが折りたたまれて圧縮されたクロマチンという構造をとっている。体細胞において,大きさと形が同じで対になって存在する染色体を という。
問(9) 文章内の 〜 に適切な数値もしくは語句を記入せよ。
問(10) 下線部 (c) について, の構造を,構成タンパク質の名称とともに概略図を示した上で,2 行以内で説明せよ。
第2問
次の〔Ⅰ〕,〔Ⅱ〕の文章を読み,以下の問(1)〜(8) に答えよ。
〔Ⅰ〕 皮膚は刺激を受け取る感覚受容器の 1 つである。皮膚への刺激により生じた興奮は,(a)<u>感覚ニューロン</u>を介して から脊髄に入り,さらに (b)<u>脊髄の を通って脳へと伝えられる</u>。これにより,(c)<u>触覚・圧覚</u>,(d)<u>温度覚</u>(温覚・冷覚), といった皮膚感覚が,刺激の種類に応じて生じる。
また,感覚ニューロンは脊髄のニューロンともシナプスを形成し,脳を介さずに皮膚からの興奮を筋肉へと伝える。これにより,(e)<u>私たちは指先に熱いものがふれたときに,意識とは無関係にすばやく手を引っ込めることができる</u>。これは 反射とよばれる。このように意識とは無関係に起こる反応は,膝蓋腱反射のように骨格筋が急に引き伸ばされたときにも起きる。このとき,骨格筋が伸び,これを が受容して感覚ニューロンが興奮する。
問(1) 文章内の 〜 に適切な語句を記入せよ。
問(2) 下線部 (a) について,感覚ニューロンの軸索の太さは,伝達する感覚情報によって異なる。触覚は,太い有髄神経繊維 A(直径 6〜12 μm)により伝えられる。温度覚は,細い有髄神経繊維 B(直径 1〜5 μm)と,無髄神経繊維 C(直径 0.2〜1.5 μm)により伝えられる。これら 3 種類の神経繊維 A,B,C を,活動電位の伝導速度が速い順に並べよ。
問(3) 下線部 (b) について,以下の (i),(ii) の問いに答えよ。
(i) 触覚を伝える感覚ニューロンの興奮は,入力側の脊髄を通って脳に向かって伝わる。一方,温度覚を伝える感覚ニューロンからの興奮は,脊髄に入ってただちに交差し,反対側の脊髄を通って反対側の脳へと伝わる。実験動物(マウス)において,首の脊髄の右側を損傷した場合に引き起こされる触覚と温度覚の異常について,正しく述べた文章を以下の①〜④の中から 1 つ選び,その番号を記せ。
① 右半身の触覚と温度覚に障害が起こる。
② 右半身の触覚と左半身の温度覚に障害が起こる。
③ 左半身の触覚と右半身の温度覚に障害が起こる。
④ 左半身の触覚と温度覚に障害が起こる。
(ii) マウスが首の脊髄の右側を損傷した場合,右の大脳半球に位置する皮膚感覚の感覚野はどのような刺激により興奮するのか,最も適切な刺激を以下の①〜④の中から 1 つ選び,その番号を記せ。
① 右半身への物理的な刺激
② 右半身への温度刺激
③ 左半身への物理的な刺激
④ 左半身への温度刺激
問(4) 下線部 (c) について,触覚は接触などに伴う皮膚の変形により生じる。このように,感覚細胞の物理的な変形によって生じる感覚を,以下の①〜⑤の中から選び,その番号を記せ(複数選択可)。
① 視覚 ② 嗅覚 ③ 聴覚 ④ 味覚 ⑤ 平衡覚
問(5) 下線部 (d) の温度覚に関わるイオンチャネルは,2021 年にノーベル生理学・医学賞を受賞したデビッド・ジュリアス博士らの研究グループにより発見された。ジュリアス博士らは,ハッカやミントに含まれる成分として知られているメントールに反応するイオンチャネルである膜タンパク質 TRPM8 を同定した。
TRPM8 は,温度変化に対しても反応して開くイオンチャネルである。このことを調べた実験の模式図を図 1 に示す。この実験では,TRPM8 を発現する細胞を培養液の中に入れ,培養液の温度を変化させた。このとき,微小な記録電極を細胞に挿入し,細胞膜を通る電流を計測した。その結果,TRPM8 を発現する細胞において温度変化に応じた電流が図 2 のように記録された。
メントールが含まれる食品や薬品には,ひんやりと感じさせる効果がある。なぜメントールにより冷感が生じるのか,図 2 から読み取れる TRPM8 の反応をもとに,4 行以内で説明せよ。

図 1(左)・図 2(右) *nA = A
問(6) 下線部 (e) は,熱いものにふれたことにより,指先で生じた興奮が腕の筋肉に伝わることで起きる。どのような経路を通って興奮が伝わり,手を引くという運動を引き起こすのか,以下の 4 つのキーワードをすべて用いて 6 行以内で説明せよ。ただし,キーワードのうち,伸筋はひじを伸ばす筋肉を,屈筋はひじを曲げる筋肉をそれぞれ指し,興奮性と抑制性の介在ニューロンは,どちらも脊髄の介在ニューロンを指すこととする。
<キーワード> 伸筋,屈筋,興奮性の介在ニューロン,抑制性の介在ニューロン
〔Ⅱ〕 皮膚感覚を処理する感覚野(体性感覚野)は,体の特定の部位からの入力を受け取る。たとえば,手に物がふれると,手に対応する感覚野が興奮する。このように体の特定の部位と脳の特定の領域が 1 対 1 に対応することから,(f)<u>体の部位に対する地図(体部位局在地図)を体性感覚野に描く</u>ことができる。
体性感覚野だけでなく,視覚情報を処理する感覚野(視覚野)においても,網膜と点対点の対応関係を持つ地図が存在する。また,(g)<u>聴覚情報を処理する感覚野(聴覚野)にも,音に対するうずまき管の基底膜の反応に対応する地図が存在する</u>。
問(7) 下線部 (f) について,体性感覚野における体部位局在地図を図 3 に示す。図 3(右)は左半球の体性感覚野の断面図を示しており,それぞれの領域のニューロンは,その上に描かれた体の部位からの入力に対して最も強く興奮する。図 3 から考えられる体部位局在地図の説明として正しいものを,以下の①〜④の中から 1 つ選び,その番号を記せ。
① 脚など筋肉量の多い部位は,体性感覚野において体の面積に比べて相対的に広い面積を占める。
② 体の表面積の大きい部位ほど,体性感覚野において広い面積を占める。
③ 触覚が鋭敏な指や手に対応する領域は,体性感覚野において体の面積に比べて相対的に広い面積を占める。
④ 頭部から遠い体の部位ほど,体性感覚野において広い面積を占める。

図 3
問(8) 下線部 (g) について,以下の (i),(ii) の問いに答えよ。
(i) うずまき管の基底膜は,卵円窓からの距離に応じて,異なる音の特性に対して振動する。また,うずまき管の基底膜が振動した位置に応じて,聴覚野の異なる部位が興奮する。このとき,聴覚野は音のどのような特性に対して興奮するのか,以下の①〜④の中から最も適切なものを 1 つ選び,その番号を記せ。
① 音の大きさ ② 音が聞こえる方向や位置 ③ 音のリズム ④ 音の高低
(ii) 加齢により,うずまき管の聴細胞が脱落すると耳が聞こえにくくなるが,音の部位局在地図を利用した人工内耳を用いることで,聴力をある程度回復することができる。人工内耳の装置の模式図を図 4 に示す。人工内耳の外部装置は,小型マイクでとらえた音を電気信号に変換し,その信号を皮下に埋め込まれた受信器に送る。受信器からのデジタル信号は,細いケーブルでうずまき管内の電極配列へと送られる。うずまき管内に置かれた電極からの電流により,うずまき管の特定の位置の聴神経を刺激することができる。小型マイクでとらえた音に対して,どのようにうずまき管を電気刺激することで,振動数の異なる音の情報を脳に伝えることができるのか,3 行以内で説明せよ。

図 4
第3問
次の文章を読み,以下の問(1)〜(6) に答えよ。
約 35 億年前の地球大気には がほとんどなく,多くは などで占められていたと考えられている。そうした環境の中で,海底の熱水噴出孔付近で光に依存しないで炭酸同化を行う硫黄細菌や鉄細菌,(a)<u>硝化菌</u>などの 細菌が現れた。一方,赤外線がわずかに届くところでは,太陽光を利用して炭酸同化を行う細菌も誕生した。それらの細菌には とよばれる光合成色素が存在しており, から と電子を得るしくみがあった。
約 27 億年前になると, から を発生する光合成を行う原核生物が現れた。やがて地球の 濃度は徐々に上昇し, を利用する好気性生物が繁栄するようになった。
20 億〜15 億年前になると,(b)<u>ミトコンドリアや葉緑体をもった真核生物</u>が誕生した。光合成を行う真核生物の繁栄によって,それまでは 0.1〜1 % 程度であった 濃度はさらに大きく上昇し,成層圏に を形成するとともに,やがて現在の大気 濃度(約 21 %)になった。 は太陽から降り注ぐ紫外線を吸収するため,陸上は生物の生活できる環境となり,まず植物が,続いて動物が上陸した。大気の 濃度は,(c)<u>植物の 固定</u>によって大きく減少した。上陸した植物は (d)<u>豊富な太陽光を巧みに利用</u>して光合成を行い,(e)<u>大気中の 濃度は約 280 ppm(= 0.028 %)まで減少して平衡状態となった</u>。
問(1) 文章内の 〜 に適切な語句を記入せよ。
問(2) 下線部 (a) に関連して,硝化菌は現在も多く生存し,地球生態系の窒素の循環において重要な役割を果たしている。その役割と,窒素が生態系内を循環する反応・形態について,以下の 6 つのキーワードをすべて用いて 7 行以内で記せ。
<キーワード> アンモニウムイオン(),硝酸イオン(),窒素ガス(),窒素同化,脱窒素細菌,窒素固定細菌
問(3) 下線部 (b) に関連して,真核生物のミトコンドリアや葉緑体は,好気性細菌や 発生の光合成を行う原核生物が宿主細胞に取り込まれて生じたと推定する学説がある。この学説について,以下の (i),(ii) の問いに答えよ。
(i) このような学説を何というか記せ。
(ii) その学説の根拠とされる細胞小器官が有する機能の特徴を 2 つ記せ。
問(4) 下線部 (c) に関連して,次の文章を読み,以下の (i)〜(iii) の問いに答えよ。
光合成生物の 固定反応は,酵素ルビスコが触媒となって生ずる反応である。このルビスコは も基質として取り込む反応も促進し, は を固定する活性部位と同じ部位に結合して反応する。そのため,ルビスコによって促進される の固定反応は, の存在によって阻害を受ける。
(i) このような酵素反応の阻害を何というか記せ。
(ii) が 21 % 存在する場合のルビスコが促進する 固定反応速度と 濃度との関係を示す図として,図 1 の①〜⑤の中から最も適切なものを 1 つ選び,その番号を記せ。

図 1
(iii) 現在の植物の光合成速度( 吸収速度)は,葉緑体をもった真核生物が出現した時代と比較して,ルビスコの反応によってより強く制限されていると推定されている。その理由を 4 行以内で記せ。
問(5) 下線部 (d) に関連して,図 2 は太陽の可視光(400〜700 nm 波長)に対する光合成色素の吸収スペクトルと光合成の作用スペクトルを示したものである。以下の (i)〜(v) の問いに答えよ。

図 2
(i) クロロフィル a は,何とよばれる色素タンパク質複合体に存在するのか,その名称を記せ。
(ii) カロテノイドは,葉緑体の何とよばれる部分に存在するのか,その名称を記せ。
(iii) 植物の葉が緑色に見える理由を,光の反射と吸収のしくみを含めて 3 行以内で記せ。
(iv) 植物の葉の光合成速度を測定する時,光源として以前は作用スペクトルの効率の高い赤色光のみの LED 照明が用いられていたが,青色光の LED 照明を 10 % 程度加えると光合成速度が安定して高くなることが示された。その理由を 1 行で記せ。
(v) 光合成色素の吸収スペクトルと作用スペクトルが必ずしも一致しない理由として,最も適切な記述を以下の①〜④の中から 1 つ選び,その番号を記せ。
① クロロフィル a とクロロフィル b が互いに競争的に光エネルギーを吸収するから。
② クロロフィルとカロテノイドの他に,緑色領域の光を吸収する光合成色素が存在するから。
③ 光合成色素に吸収されにくい波長の光は,葉内深部で屈折と反射を繰り返し,葉緑体に衝突する頻度が増えて光合成に使われるから。
④ カロテノイドがクロロフィルの青色領域の光吸収を妨げるから。
問(6) 下線部 (e) に関連して,現在の大気中の 濃度は 420 ppm を超えている。地球上の炭素の循環において,どのようなことが起こり, 濃度が上昇し続けているのか,以下の 7 つのキーワードをすべて用いて 7 行以内で説明せよ。
<キーワード> 光合成,呼吸,生産者,消費者,分解者,森林,化石燃料