CHAPTER 12/2023〜

第4次ブームのいま

答え合わせ待ちの予言(2023年〜)

文章や画像を作るAIが広まり、「この年までに」という予言がたくさん出た。この時代も、過去のブームと同じ物差しで見てみよう。何ができるようになり、何を期待し、何がまだ分かっていないのか。答えの年がまだ来ていない予言を、答え合わせできる形に並べる。

012017〜2026・呼び名

第4次は、いつからか

は、だれが、いつからと決めたのだろうか。

このサイトは、文章や画像を作る生成AIをふつうの人が自分で使い始めた2022年(8月にStable Diffusion、11月30日にChatGPTが公開)を、第4次の目印にしている。ただし、「第4次」と呼ぶかどうか自体が、まだ決まっていない。

国会の会議録にはが1回も出てこない(2026年9月まで。は6回)。総務省の白書は2024年にと書いたが、2025年と2026年の版ではこの言葉を使っていない。人工知能学会の座談会(2023年11月)では(authorizeは、正式に認めるという意味の英語)という声も出た。

右の図は、「いつから第4次か」の説を、年ごとの帯で並べたもの。下の物差しを切り替えてみよう。研究費で区切るなら、第3次から研究費が途切れていないので、区切りは無い。世の中の注目(国会での発言の数)で区切るなら、2022〜2023年に区切りがある。ブームの番号は、あとから人が付けるものだ。

知ってるつもりよく言われる話:第4次AIブームはChatGPTなどの生成AIのブームのこと
元の資料では:2017年の人工知能学会の雑誌ではと、まだ来ていない未来のブームを指していた。

図が示すこと:『第4次はいつから』の答えは、だれが言ったかと、何の物差しで区切るかで変わる。研究費で見れば区切りは無く、世の中の注目で見れば2022〜2023年に区切りがある。ブームの番号は、あとから人が付けるもの。

国会でAIの意味の「AI」が出た発言の数(年ごと)
022023・伝言ゲーム

がに

人の言葉は、伝わるうちにどう変わるのか。

2023年3月、東京大学の松尾豊さんはインタビューでと話した。そう呼んでもよい、という控えめな言い方だ。ところが記事の小見出しはだった(見出しは編集の側が付ける)。雑誌の題・論文・文章・記事と伝わるうちに、2024年にはになった。

右の図で6枚を1枚ずつ進めると、消えた字と足された字に色がつく。2つの文の違いを機械で見つける方法を差分(diff)という。表を埋めて、共通する最も長い字の並びを求め、残りを消えた字・足された字とする。

L(i, j)=L(i−1, j−1)+1(i字目とj字目が同じ時)、ほかはmax{ L(i−1, j), L(i, j−1) }
L(i, j)
Aのi字目までとBのj字目までに共通する、最も長い並びの字数
知ってるつもりよく言われる話:松尾豊さんが2023年に第4次AIブームの幕開けを宣言した
元の資料では:本人の発言はだった。やは、見出しや引用を経て強まった表現。

図が示すこと:『言ってもいいと思っています』という控えめな言葉が、見出しや引用を通るたびに字が消えたり足されたりして、1年後には『幕開けと語っています』になった。

032020・スケーリング則

大きくするほど、決まった形で良くなる

AIのパラメータの数を10倍にすると、成績はどれだけ良くなるのか。

2020年、OpenAIとジョンズ・ホプキンズ大学の研究者たちは、文章AIの成績(次の言葉の当てにくさ。損失)が、パラメータの数・学習する文章の量・計算量を増やすと決まった形で良くなることを、7けた(1,000万倍)以上の幅で示した。第4次の多くの予言の土台の1つだ。

形はべき乗の法則(下の式。α ≈ 0.076は論文の値)。両辺の対数をとるとlog L=α log Nc − α log Nなので、縦も横も10倍ごとの目盛りにすると直線になる。Nを10倍にするたび、損失は10の −0.076乗 ≈ 0.84倍。右の図でNと目盛りを動かしてみよう。ただし著者自身が(訳)と書いている。

L(N)= (Nc /N)α
L
損失(小さいほど良い)
N
パラメータ(学習で決まる数。図では部品)の数
Nc
約8.8 × 10の13乗(論文の値)
知ってるつもりよく言われる話:大きくすればいくらでも賢くなる、という法則
元の資料では:測った範囲で形が続いた、と示した論文。どこまで続くかは分からない、と著者自身が書いている。

図が示すこと:パラメータの数を10倍にするたび、損失は約0.84倍になる。この決まった形は、10倍ごとの目盛りで見るとまっすぐな線になる。ただし著者自身が、いつかは頭打ちになると書いている。

パラメータの数を10倍にするごとの損失
042010〜2026・外挿

直線をのばして先を見積もる

これまでの増え方の線を先までのばすと、どれくらい当たるのか。

研究所Epoch AIは、発表されたAIの学習に使った計算の回数(計算量、FLOP)を集め、誰でも使える条件(CC BY 4.0)で公開している。計算量は桁違いに増えるため、縦の目盛りを 10倍ごとに同じ幅にとる(対数目盛り)。すると増え方が直線に近く見える。

データに合う直線(回帰直線)を引き、データの無い先までのばして見積もることを外挿という。2010〜2018年の「その年のいちばん大きいAI」で線を引き、2019年からを見積もると、後の年ほど実際より大きく見積もり、2024年は約1.2桁(約16倍)の差が出た。右の図で線を引く期間を動かすと、傾きも見積もりも変わる。

外挿は「この増え方が続けば」という前提の上の話だ。2023年のアメリカの大統領令は、学習に10の26乗回をこえる計算を使ったAIなどに、政府への報告を求めた。図の点線がその高さ。

log10(計算量) ≈ a × 年 +b
a
1年で増える桁の数(1/a年で10倍)
回帰直線
点との誤差の2乗の合計がいちばん小さい直線

図が示すこと:これまでの点に線を引いて先へのばすと見積もりができるが、線を引く期間を変えるだけで傾きも見積もりも変わる。2010〜2018年の線でのばすと、2024年は実際より約1.2桁(約16倍)大きく見積もった。

見積もりと実際の差(桁。+は実際が上)
052023・推計

「2か月で1億人」は、だれが数えたか

「使った人の数」は、どうやって数えるのか。

2023年2月、「ChatGPTは公開から2か月で1億人が使い、史上いちばん速く広まったアプリ」というニュースが広まった。元は会社の発表ではなく、投資銀行UBSのアナリストのメモだった。ウェブの訪問を数える会社Similarwebの数字から、(訳)としたものだ。

外から全員を数えることはできない。そこで、一部の人(パネル)の動きを調べ、全体の人数に合わせて引き伸ばして見積もる(推計)。また訪問者の数では、同じ人がスマホとパソコンから来ると2人に数えられることがある。右の図でパネルの大きさを変え、「機械ごとに数える」にして機械の数も変えてみよう。推計は本当の人数からずれ、選び直すたびに揺れる。

推計 = パネルの中で使った数 ×(全体の人数 ÷ パネルの人数)
図の人数・機械の数・パネルは、このサイトが作った数
知ってるつもりよく言われる話:ChatGPTは2か月で1億人が使った(会社の記録)
元の資料では:元はUBSのアナリストのメモで、ウェブの訪問の数からのだった。

図が示すこと:全員は数えられないので、一部の人(パネル)を調べて全体に引き伸ばす(推計)。パネルが小さいと選び直すたびに揺れ、機械の数で数えると本当の人数より多く出る。

パネルを選び直した40回の推計(横線は本当の人数)
062023・百分位

「上位10%」は、だれと比べて?

同じ点数でも、比べる相手が変わると順位は変わるのか。

2023年3月、OpenAIは文章AI「GPT-4」の技術報告で、アメリカの弁護士試験の模擬テストで(訳)を取ったと書いた。

順位を割合で表す百分位は、その点より低い人が何%いるかを示す。だれの中で比べるかで変わる。2024年の査読付きの論文は、比べた相手が、再受験の多い2月の試験の受験者だったと指摘した。初めて受けた人と比べると約62、合格した人と比べると約48番目の百分位と見積もっている(上から約38%と約52%)。右の図で相手を切り替えると、同じ点のまま百分位が動く。

百分位 =(その点より低い人の数 ÷ 比べる人の数)× 100
分布の形はこのサイトが作った。約90・62・48は報告と論文の数

図が示すこと:GPT-4の点は1つなのに、比べる相手を『2月の受験者』から『初めての人』『合格した人』に変えると、百分位が約90から約62、約48に下がる。

072023〜2025・公開の形

中身まで配る・貸す・一部から試す

言語モデルを「公開する」とは、何を渡すことなのか。

2023年2月27日〜3月21日、各社が言語モデルを相次いで出した。Metaは研究者向けに中身ごと配るLLaMA、Anthropicは企業向けのClaude、百度は招待された人から使える文心一言、グーグルは(訳)としてBard。日本では10月、国立情報学研究所に集まった研究者たちがLLM-jp-13B(パラメータ130億)を、学習に使った文章まで公開した。2025年1月には、中国のDeepSeekがR1を中身ごと配った。

AIの中身とは、学習で決まった数(重み)の並びだ。中身を配るとは、その数のファイルを渡すこと。右の図で1個の数を書くビットを減らすと、ファイルは小さくなるが、数が丸められて少しずれる(量子化)。

ファイルの大きさ(バイト)≈ 部品の数 × ビット数 ÷ 8
1バイト
8ビット。式の部品の数は、重み(パラメータ)の個数

図が示すこと:中身を配るとは、学習で決まった数(重み)のファイルを渡すこと。1個の数を書くビットを減らすとファイルは小さくなり、家のパソコンにも入るが、数が丸められて少しずれる。

ビット数を減らしたときの重みの平均誤差
082023・止める?

止めようという手紙と、止めにくさ

みんなが「止めたほうがいい」と思っても、止めにくいのはなぜか。

2023年3月、アメリカの団体Future of Life Instituteは、すべてのAI研究所に(訳)と呼びかける公開の手紙を出した。止められないなら国が止めるべきだ、とも書いた。6か月後、同じ団体の文書は止まったとは書かず、会長は(訳)と語った。

右は、2つの研究所が「止める」「続ける」を選ぶゲーム理論の小さな図だ(点数はこのサイトが作った)。相手が止めるなら、自分は続けたほうが先に進める。相手が続けるなら、自分だけ止めると置いていかれる。どちらの場合も「続ける」が得なら、2つとも続ける状態で落ち着く(ナッシュ均衡)。2つとも止めたほうが双方に良くても、そこへは行きにくい(囚人のジレンマ)。「国の決まり:続けた時の罰」で続けたときの罰を加えると、落ち着く場所が変わる。

同じ年の5月、今のAIの土台を作った研究者の1人、ヒントンさんがグーグルをやめ、AIの危険を語り始めた。研究者やAI企業の代表が署名した1文の声明も出た。ヒントンさんと同じくチューリング賞を受けたルカンさんは、こうした警告は大げさだと述べた。

知ってるつもりよく言われる話:ヒントンさんはグーグルのやり方に抗議してやめた
元の資料では:本人はBBCに、グーグルを批判したいのではなく、グーグルは(訳)やり方をしてきた、と語った。

図が示すこと:相手がどうしても自分は続けた方が得、という点数だと、2つとも止めた方がよいのに、2つとも続ける所に落ち着く。続けた時の罰(国の決まり)を加えると、落ち着く場所が変わる。

092023〜2026・日本

使った人は9.1%から58.8%へ

最も大きく増えたのはどこか。比べる基準によって答えは変わるのか。

そのころ日本では、2023年5月、日本が議長を務めたG7広島サミットで、生成AI(文章や画像を作るAI)のルールを話し合う「広島AIプロセス」が始まった。7月、文部科学省は小中高校向けの手引きで、まずはとした。2024年3月、文化庁の審議会がAIと著作権の考え方をまとめ、2025年5月、AIの研究開発と活用を推し進める法律(AI推進法)ができた。

総務省の調査で、生成AIを使ったことがある人は、日本で9.1%(2023年度)→ 26.7% → 58.8%(2025年度)と増えた。アメリカ・ドイツ・中国より低いが、2026年の白書は、1年で最も大きく増えたのは日本だと書いた。右の図で差で比べる(何ポイント増えたか)と比で比べる(何倍になったか)を切り替えてみよう。2024年度の増え方は、差で見ると4か国で最も小さく、比で見ると最も大きい。

差 = 今年 − 去年(ポイント) 比 = 今年 ÷ 去年(倍)

2025年度から15〜19歳も調べる対象に加えたので、前の年とまったく同じ比べ方ではない(図の印)。

図が示すこと:同じ数でも、差(何ポイント増えたか)で見ると日本はいちばん小さく、比(何倍になったか)で見るといちばん大きい。『いちばん増えた』は物差しで入れかわる。

102023〜2026・各国のルール

ルールはいつから効くのか

同じ時期に、国ごとにどんな形のルールができたのか。

2023年11月、イギリスのブレッチリー・パークで、最先端AIの安全性を話し合う初の国際会議が開かれた。中国や日本を含む28か国とEUが、最先端AIの力について(訳)と宣言した。

ルールの形は国や地域ごとに異なる。EUは、AIのリスクの大きさに応じてルールを変えるを作り、適用開始の日を段階に分けた(2026年7月、一部を延期した)。中国は2023年に生成AIサービスの暫定規則を施行し、2025年にはAIが作ったものに表示をつける規則を始めた。アメリカには国全体のAI法はなく、大統領令による方針が2023〜2026年に何度も向きを変えた。日本は2025年に、開発や活用を推進するための法律を作った。

右の図は、4つの地域のルールや計画・機関と、国の代表による会議の時期を示した物差しだ。日付を動かすと、その時点までに始まった項目や、撤回された項目が分かる。日本の法律は成立の時期を示す。EUは、「当初の予定を見る」と「延期した後を見る」を切り替えて比べられる。

国の代表による会議は、2024年ソウル、2025年パリ、2026年ニューデリーと続いた。パリ声明の署名一覧に、アメリカとイギリスの名前はない。

図が示すこと:同じ時期でも、国や地域ごとにルールの形も始まる日もばらばらで、アメリカは大統領令で何度も向きを変え、EUは始まる日を延ばした。

112018〜2025・記事を使う

「使わないで」の目印は、鍵ではない

ネットの記事を、AIの会社は自由に使ってよいのか。

日本の著作権法は2018年の改正(第30条の4)で、AIの学習を原則として許可なしでできるようにした。2024年3月、文化庁の審議会は考え方を整理した。学習に使った作品の表現をわざと出させるための学習のように、作品を味わう目的もまじる場合は、この例外に入らないと考えられる、とした(この文書に法律の力は無い、と最初に断っている)。

2025年8月、読売新聞のグループに続いて、日本経済新聞社と朝日新聞社が、質問にAIで答える検索サービス会社を東京地方裁判所に訴えた。日経の発表によると、両社はサイトに robots.txt という、機械に記事を使わないよう伝える目印を置いていたのに、相手はそれを無視して記事を使った、と主張している。

robots.txtは、サイトのいちばん上に置く短いテキストファイル。「どのロボットに」「どこを見ないで」と書く。右の図で決まりを切り替えてみよう。守るロボットは入らない。けれど目印は鍵ではない。守らないロボットは、技術的には入れてしまう。

裁判の結果は、このサイトでは確認していない。

知ってるつもりよく言われる話:日本ではAIの学習は何でも自由
元の資料では:2024年の文化庁の審議会の整理では、学習に使った作品の表現をわざと出させるための学習は、例外に当たらないことがある。ただし、この文書そのものに法律の力はない。

図が示すこと:robots.txtは『このロボットはここを見ないで』と書いた目印で、守るロボットは入らないが、鍵ではないので守らないロボットは入れてしまう。

122025・費用の数え方

557.6万ドルと5,000億ドル

「AIを作るのにかかったお金」は、何を数えた額なのだろうか。

2025年1月、中国のDeepSeekが言語モデルを公開すると、600万ドルでアメリカに負けないAIを作った、と広まった。元の報告の557.6万ドルは、土台のV3の(訳)だけの額で、GPUを1時間2ドルで借りたと仮定している。(訳)と報告自身が書いている。

同じ月、アメリカにAIの計算設備を作るが(訳)と発表した。会社の計画の額で、実際にいくら使われたかは、この発表からは分からない。右の図で、何を数えるかで額が変わるのを確かめよう。

学習の費用 ≈ 部品を使った時間(GPU時間)× 1時間の値段

図が示すこと:557.6万ドルは『正式な学習』のGPUの借り賃だけを、1時間2ドルと仮定した額で、それまでの研究などは入っていない。5,000億ドルは『投じるつもり』の計画の額。数えたものが違うので、並べて比べても意味は少ない。

132016〜2023・アンケート

聞き方で答えが70年ずれる

専門家にたずねた「人間並みのAIはいつ?」は、どうやって1つの年になるのか。

2023年の秋、AIの研究者2,778人へのアンケートで、(訳)見込みが五分五分になる年は2047年(前の年の調査より13年早い)。ところが(訳)年を聞くと2116年だった。論文は(訳)と書いた。

1つの年はこう作る。1人ずつに、年と見込みの組を3つ答えてもらう(年を決めて見込みを聞くか、10%・50%・90%を決めて年を聞く)。それに合う曲線(ガンマ分布の形)を引き、全員の曲線を平均して、50%を超える年を読む。論文では、年を決める聞き方で34年後、見込みを決める聞き方で17年後だった。

全体の曲線F(t)=(F1(t)+ … +Fn(t))÷ n
Fi(t)
i番目の人の、t年後までの見込み
図の回答者はこのサイトが作った
知ってるつもりよく言われる話:AIの専門家は、2047年に人間並みのAIができると予想した
元の資料では:同じ調査でも、聞き方を変えると2116年。どちらも見込みが五分五分になる年で、できると言い切った年ではない。

図が示すこと:1人ずつの答えに曲線を合わせ、全員の曲線を平均して50%を超える年を読む。同じ人たちでも、年を決めて聞くか見込みを決めて聞くかで、出てくる年が大きくずれる。

142024〜2047・答え合わせ待ち

答え合わせ待ちの棚

いま出ている「この年までに」は、いつ答えが出るのか。

右の棚には、答えの年がまだ来ていない予言と来たばかりの予言を、答えの年の順に並べた。会社の予言は、どの会社も同じ大きさのカード1枚にした。言い方は元の文章のまま(思う・ありうる・かもしれない)。

年を書かない予言もある。OpenAIの代表アルトマンさんは2024年、(訳)と書いた。2,000日なら2030年ごろ、5,000日なら2038年ごろ(このサイトの計算)。答えの年が来たものもある。2011年、シェーン・レッグさんは人間並みのAGI(いろいろな仕事をこなせるAI)を「平均2028年、いちばんありそうなのは2025年」と予想した。2025年は過ぎたが、できたと第三者が判定した資料は見つけていない。今日のつまみを動かしてみよう。

答えまでの年 =(答えの日 − 今日)÷ 365.25
365.25
うるう年を平均した1年の日数

図が示すこと:いま出ている予言の多くは、答えの年がまだ来ていない。答えの年が来たもの(レッグさんの2025年)も、できたと第三者が判定した資料は見つかっていない。

152002〜2029・賭け

5分の試験と24時間の試験

同じでも、条件が違えば結果は変わるのか。

発明家レイ・カーツワイルさんは、AIは2029年までに人間並みの知能に届くと予言し、2002年、ミッチ・ケイパーさんと2万ドルを賭けた。決まりはこうだ。3人の審査員が、コンピュータと人間3人の計4人と(訳)をし、2人以上をだませたら合格。

2025年、アメリカの大学の研究者は、質問者が人と機械の両方と同時に5分話す実験で、GPT-4.5が73%の割合で人間と判定されたと発表した。ただし賭けとは別の試験で、賭けの答えは2029年まで出ない。右の図は、1分ごとに見破られる確率をp(このサイトが決めた数)とした時、長く話すほど見破られやすくなる様子。

q=(1 − p)T  2人以上 =3q2(1 − q)+q3
q
T分だまし続けられる確率
p
1分ごとに見破られる確率(毎分同じと仮定)

図が示すこと:1分ごとに見破られる見込みが小さくても、長く話すほど見破られやすくなる。5分の試験に受かっても、24時間の試験に受かるとは限らない。

話す時間と、だまし続けられる確率
162022→2025・確率の予言

8%未満と16%超、答えが出た

「起きる見込みは8%」という予言は、どう答え合わせするのか。

2022年2月、AIの進み方の見立てが違うAI研究者2人が、答えがはっきり出る予想として、国際数学オリンピック(高校生の大会)で(訳)見込みを公開した。ポール・クリスティアーノさんは8%未満、エリエゼル・ユドコウスキーさんは16%超。

2025年7月、Google DeepMindは、Geminiの強化版が6問中5問を完全に解き、42点中35点(金メダルの点)を取ったと発表した。答えは4.5時間の制限の中でふつうの言葉で書かれ、大会の採点者が正式に採点した。最も難しい第6問は解けていない。

確率の予言は「当たり・外れ」では言えないので、ブライア・スコアで採点する。起きたら1、起きなかったら0とし、言った確率との差を2乗する。小さいほど良い。右の図で確率を動かし、何回も予言した時の点も比べよう。1回だけでは、どちらの見立てが上手かは決まらない。

ブライア・スコア =(p − o)2
p
言った確率
o
起きたら1、起きなかったら0

図が示すこと:確率の予言は、起きたら1・起きなかったら0との差の2乗(ブライア・スコア)で採点する。2025年に金が取れたので16%超の側の点が良かったが、1回だけでは、どちらの見立てが上手かは決まらない。

100回くり返した時の、平均の点の動き
172025・この先の速さ

同じ過去から、3つの未来

これまでのデータがあれば、この先の速さは決まるのか。

2025年1月、ヨシュア・ベンジオさんを長とする96人の専門家が、AIの安全についての国際的な報告をまとめた。専門家には、30か国と国連・EU・OECDが選んだ助言の委員会の人も含まれる(日本からは北野宏明さん)。報告は、汎用AIの能力は(訳)と書き、この先の速さで専門家の意見が分かれている、とした。

右の図は、同じ点(このサイトが作った数)に、直線、指数(決まった年ごとに何倍にもなる)、S字(いつか頭打ちになる)の3つの線を合わせたもの。過去の範囲では、どの線も点の近くを通る。ところがデータの無い先で大きく分かれる。過去の点だけでは、どの形が正しいかは決まらない。

直線y=a+bt 指数y=a·ebt S字y=K/(1+e−b(t − t₀))
t
年
K
頭打ちになる上限
t₀
最も速く伸びる年

図が示すこと:同じ過去の点に、直線・指数・S字の3つの線を合わせると、過去ではどれも点の近くを通るのに、この先では大きく分かれる。過去の点だけでは、どの形が正しいかは決まらない。

過去の点との誤差(線ごと)
182025・中を調べる

作った人にも、中はほとんど読み解けない

学習で作られたAIの中で、何が起きているのかは分かるのか。

同じ国際報告は、汎用AIのモデルは(訳)と説明し、(訳)と書いた。

AIの内部で何が計算されているかを調べる研究者29人(会社と大学にまたがる)も、2025年に(訳)とまとめた。たとえば、手がかりの中心のとは何かが、はっきりしないこと。いまは主に、外から答えを見るの試験で調べていること。小さなおもちゃのAIで使えた方法が、大きなAIにも使えるかは分からないこと。

右の図は、その場で学習させた小さなニューラルネットワーク(隠れ層のニューロン4つ。図では部品)。ニューロンを押すと、入力のどこに強く反応するかが見える。外から見るにすると、答えだけが見える。

図が示すこと:ニューロン4つの小さなネットワークなら、1つずつ押してどこに反応するかを調べられる。でも大きなAIは数が何十億もあり、外から答えを見るしかないことが多い。

192025〜2026・期待と値段

見込みが少し変わると、値段は大きく動く

中央銀行は、なぜAIについての見込みを心配したのか。

2025年10月、イギリスの中央銀行(イングランド銀行)の委員会は、(訳)と書いた。(訳)市場が大きく影響を受けるおそれがある、ともした。2026年7月も(訳)としたが、値段は上がり続けていた。

株の値段を、この先ずっと生む利益の見込みから考える方法がある。利益が毎年gの割合で伸びると見込み、割引率rで今の価値に直すと、値段 = 来年の利益 ÷(r − g)。gがrに近いと、gが少し下がるだけで値段は大きく下がる(図の数はこのサイトが作った)。第4次のあとに冬が来るかは、まだ分からない。

値段 = 来年の利益 ÷(r − g)
r
将来のお金を今の価値に直す割合(割引率)
g
利益が毎年伸びる割合(g<rの時の式)

図が示すこと:値段 = 来年の利益 ÷(r − g)なので、利益の伸びの見込みgが割引率rに近い時は、gが1ポイント下がるだけで値段が大きく下がる。

見込みが1ポイント下がったときの値段の下がり方
おわりに

答えの年は、これから来る

この章で並べた予言の多くは、答えの年がまだ来ていない。答えが出たのは、数学オリンピックのように「何ができたら当たりか」を先に決めていた予言だった。年を書かない予言や、言葉の意味(AGI、強力なAI、超知能)を決めていない予言は、答えの年が来ても、答え合わせそのものが難しい。

分かっていないことは3つある。今の大きなAIの中で何が起きているか(作った人にもほとんど読み解けない)。これからの進む速さ(ゆっくり・速く・とても速く、のどれもありうる)。そして、第4次のあとに冬が来るかどうかだ。

過去のブームのときも、当時の人々は「今度こそ本物」と言っていた。次の章では4つの波を重ね、このサイトが集めた予言のすべてを1枚の地図にする。くり返しに見える形と、まだ分からないことを確かめよう。

この章のほかの出来事(4件。どれも元の資料と確度つき)
2024年10月8日元で確認

ノーベル物理学賞が、学ぶAI(ニューラルネットワーク)の土台を作ったホップフィールドさんとヒントンさんに

2024年のノーベル物理学賞は、ジョン・ホップフィールドさん(アメリカ・プリンストン大学)とジェフリー・ヒントンさん(カナダ・トロント大学)に贈られた。理由はである。ホップフィールドさんは1982年に、不完全な情報から記憶したパターンを復元する仕組み(連想記憶)を提案した。ヒントンさんはそれを基に、ボルツマン・マシンという学習する仕組みを開発した。どちらも物理学(磁石の性質や、多数の粒子の集まりを扱う学問)の手法を取り入れている。選考委員会の詳しい解説には、日本の研究者(1972年のNakanoとAmari、1980年のFukushima)の論文も、同じ流れの研究として引用されている。

元の資料2件と確かめた所
  1. Press release: The Nobel Prize in Physics 2024(The Royal Swedish Academy of Sciences・2024・本文・元の資料)
  2. Scientific Background to the Nobel Prize in Physics 2024(The Nobel Committee for Physics・2024・PDF 4枚目 本文p.4(参照 [5-10])、p.5(1982年の…・元の資料)
2024年10月9日元で確認

ノーベル化学賞の半分が、タンパク質の形を当てるAIを作ったハサビスさんとジャンパーさんに

2024年のノーベル化学賞は、半分がコンピュータで新しいタンパク質を設計したデビッド・ベイカーさん(アメリカ・ワシントン大学)に贈られた。もう半分はで、デミス・ハサビスさんとジョン・ジャンパーさん(イギリス・グーグル・ディープマインド)に贈られた。発表文は、2020年に2人がAlphaFold2を発表し、見つかっているおよそ2億のタンパク質のほぼすべての構造を予測できたこと、190の国の200万人以上に使われていることを挙げている。前日の物理学賞と合わせて、2日続けてAIに関わる研究がノーベル賞に選ばれた。

元の資料1件と確かめた所
  1. Press release: The Nobel Prize in Chemistry 2024(The Royal Swedish Academy of Sciences・2024・本文・元の資料)
2026年8月25日元で確認

と呼ばれたAmazonメカニカル・タークが、21年で終わる(2026年9月30日)

Amazonメカニカル・タークは、2005年に始まった、プログラムから人に小さな仕事を依頼できる仕組みである(2009年のImageNetでは、写真が本当にその物の写真かを確かめる作業に使われた)。Amazonは2026年8月、として9月30日でサービスを永久に終了すると告知した。仕事の出し入れは9月30日で終わる。同じ日から、AWSのデータにラベルを付けるサービス(SageMaker Ground Truthなど)でも、タークの働き手を選べなくなる。報道(CNBC)によると、一時は50万人を超える働き手がいたが、最近は利用が減り、データにラベルを付ける別の会社が増えていた。2023年のスイスの大学(EPFL)の研究は、タークで文章の要約の仕事をした人の33〜46%が、文章を生成するAIを使ったと見積もっていた。

よく言われる話:と報道された
元の資料では:元の研究は、タークに出した1つの仕事(文章の要約)で33〜46%と見積もったものだった。研究者自身がと書いている。

分かっていないこと:人間が作成したはずのデータに、どれだけAI生成データが混ざっているかは、識別方法も含めて研究の途上である(2023年の研究は、人のデータを人のまま保つ新しい方法が必要だと指摘している)。

元の資料5件と確かめた所
  1. Amazon Mechanical Turk — Help(Closure FAQs、2026-09-23に保存)(Amazon Mechanical Turk・2026・トップの告知とClosure FAQs・元の資料)
  2. Amazon service Bezos once called 'artificial artificial intelligence' is shutting down(Annie Palmer (CNBC)・2026・本文・まとめ)
  3. Artificial Artificial Artificial Intelligence: Crowd Workers Widely Use Large Language Models for Text Production Tasks (arXiv:2306.07899v1)(Veniamin Veselovsky, Manoel Horta Ribeiro, Robert West (EPFL)・2023・PDF 1枚目Abstract・元の資料)
  4. Announcing Amazon Mechanical Turk (AWS What's New)(Amazon Web Services・2005・本文・元の資料)
  5. ImageNet: A Large-Scale Hierarchical Image Database (CVPR 2009)(Jia Dengほか・2009・PDF 4枚目3. Constructing ImageNet・元の資料)
2026年9月23日確認が弱い食い違いあり日本

Wikipedia日本語版は見出しに、英語版は番号なしの(2020年代)「AI spring」と表記

Wikipedia日本語版は見出しで、第1回AIブームを1956〜1974年、AIの冬 第1期を1974〜1980年、第2回を1980〜1987年、AIの冬 第2期を1987〜1993年、第3回を2006〜2019年、第4回をとする。日本語版にはという節がある。英語版は、直近のブームを2020年代とし番号はつけず、『AI spring』とも呼ばれると書く。英語版は大きな冬を1974〜1980年と1987〜2000年の2回としている。

分かっていないこと:Wikipediaは随時更新される。ここに記したのは2026-09時点の版の記述。

元の資料3件と確かめた所

食い違い:第4次の始まり:Wikipedia日本語版は2020年代以降、同は2022年〜(AIの春)。第3次の期間:同は2006〜2019年(2020年代から第4回)。第2の冬の終わり:英語版は2000年、日本語版は1993年。

  1. Wikipedia日本語版「人工知能の歴史」(版111074494、2026-09-19)(Wikipedia・2026・見出し・まとめ)
  2. Wikipedia日本語版「AIの冬」(版111086722、2026-09-20)(Wikipedia・2026・節「現在のAIの春(2022年〜現在)」・まとめ)
  3. Wikipedia英語版「AI boom」(版1376281315、2026-09-23)と「AI winter」(版1374895630、2026-09-14)(Wikipedia・2026・冒頭の段落・まとめ)