単純ベイズ(ナイーブベイズ)分類は、文書に含まれる手がかりの単語から、その文書が各分野に属する確率をベイズの定理で計算し、最も確率が高い分野に分類する方法である。分野が決まれば単語同士は独立に出現すると仮定し、単語ごとの確率を掛け合わせるだけで計算できるようにする。マロン(M. E. Maron、The RAND Corporation)は1961年の論文で、コンピュータ雑誌IRE Transactions on Electronic Computersの1959年の要約405本を使って実験した。3月号と6月号の260本を訓練データとして単語と分野の関係を数えた。9月号の145本は準備の間まったく見ないでおき、あとでテストデータとして使った。分野は32、手がかりの単語は90語である。手がかりの単語を2つ以上含むテスト用の85本では、確率1位の分野が正しかったのは44本(51.8%)、上位3位以内に正しい分野があったのは68本(80%)だった。
最小二乗法(さいしょうにじょうほう)は、測った値と式で計算した値の誤差を1つずつ2乗してすべて足し合わせ、その合計が最も小さくなるように式の定数(直線なら傾きや切片)を決める方法である。ルジャンドル(A. M. Legendre)は1805年、パリで出版した彗星の軌道決定に関する著書の付録(最小二乗法について)で、式の数が知りたい数より多いと誤差をすべて0にはできないため、誤差の2乗の和を最小にするのが最も一般的で正確で実用的だと書いた。こうすると誤差同士の釣り合いが取れ、極端な誤差の影響を防げるとも記している。ガウス(C. F. Gauss)は1809年にハンブルクで出版した天体運動の著書の186節で、差の2乗の和を最小にする原理は自分たちが1795年から使ってきたもので、最近ルジャンドルも発表した、と書いた。1981年に歴史を調べ直したスティグラーは、これを統計の歴史で最も有名な優先権争いと呼んでいる。
食い違い:ルジャンドルの本の出版年:表紙はAN XIII − 1805。ガウスは1809年の本でParis 1806と引用している(archive.orgには補遺つきの1806年版もある)。ガウスが使い始めた年:1809年の著書では1795年、スティグラー(1981)によると後年の証言では1794年のこともある。
ロジスティック回帰は、答えがはい・いいえのように1か0になるデータで、1になる確率を年齢などの説明変数から予測する手法。通常の線形回帰では予測が0より小さくなったり1より大きくなったりするが、S字のロジスティック曲線を使うと予測がいつも0と1の間に収まり、結果はオッズ比(起きやすさの比)で読み取れる。コックス(D. R. Cox、論文の所属はBirkbeck College, University of London)は1958年7月の論文で、0と1の並びを観測し、1が出る確率が1つ以上の説明変数に左右されると考えられる時の検定と推定を扱った。要旨には、先行する研究がかなりあり、それも見直す、と書いてある。コックスは1994年のインタビューで、狙いは最小二乗回帰に似た、0と1のデータを分析するための体系的な枠組みを作ることで、バークベック・カレッジの実験心理学の人たちが0と1のデータの分析に強い関心を持っていたことがきっかけの1つだった、と話している。
k近傍法(k-NN)は、分類したい新しい点に近い順にk個のラベル付きデータを探し、最も多数を占めるグループに分類する手法である。あらかじめデータの分布を決めないため、ノンパラメトリックな手法と呼ばれる。1951年2月、フィックス(E. Fix)とホッジス(J. L. Hodges, Jr.)は、アメリカ空軍航空医学校(USAF School of Aviation Medicine、テキサス州Randolph Field)の報告書で、この種の規則を考案した。データの数nの増加に合わせてkも増やし、k/nを0に近づければ、この規則が一致性を持つ(データが増えるほど最適な分類に近づく)ことを示した。1967年のカバーとハートの論文がこう紹介している。
最近傍法(k=1のk近傍法)は、新しいデータを、最も近い分類済みの点と同じクラス(組)に分類する手法である。カバー(T. M. Cover、Stanford University)とハート(P. E. Hart、Stanford Research Institute)は1967年1月の論文で、分類済みの点が十分に多いとき、この手法の誤り率Rは、分布を完全に知っている場合の最小誤り率R*(ベイズ誤り率)より小さくはならないものの、R* の2倍を超えないことを示した(クラス数をMとするとR* ≤ R ≤ R*(2 − MR*/(M − 1)))。論文は、この意味で、無限のデータに含まれる分類情報の半分は最も近い1点に含まれている、と書いている。
空軍基地(Lackland Air Force Base)航空宇宙医学部門のジョー・H・ウォードJr. は、100を超えるような大規模な調査で、人や対象を似たグループ(クラスタ)に分ける手順を示した。n個のグループ(初めは1つずつ)から2つを合わせるn(n−1)/2通りをすべて調べ、目的関数(まとめ方の良さを表す数値。調べる人が目的に合わせて選ぶ)が最も良くなる2つを統合してn−1個にする。これを1つになるまで繰り返すと、全体の階層構造と、各段階で失われる情報量が分かる。論文の例では、10人の点数2, 6, 5, 6, 2, 2, 2, 0, 0, 0を1つのグループとして平均値で代表すると誤差二乗和(平均からのずれの二乗の合計)は50.5になるが、{0,0,0} {2,2,2,2} {5} {6,6} の4つに分ければ0になる。
よく言われる話:「ウォード法は、組の中のばらつき(誤差の二乗和)の増え方が一番小さい組を合わせていく方法」と教わりがち 元の資料では:ウォードの1963年の論文は、目的関数は分析者が目的に応じて選ぶどんな関数でもよい、という一般的な手順として書いている。誤差の二乗和は説明の例の1つにすぎない。論文の人事研究所(Personnel Research Laboratory)では、人を似た者どうしにまとめる、再配置の訓練時間が少なくなるように仕事をまとめる、職務記述書の数を減らす、予測式の数を減らす、という4つの目的に対し、それぞれ別の目的関数を設定して同じコンピュータのプログラムを使っていた。
プリンストンの国防分析研究所(Institute for Defense Analyses)のレナード・E・バウムとテッド・ペトリーは、ある確率モデルを考えた。外から見えない状態がマルコフ連鎖(次の状態が現在の状態だけで確率的に決まる移り変わり)で動き、状態ごとに確率的に記号が出てくる、というモデルである。彼らはこれをマルコフ連鎖の確率的な関数と呼んだ。そして、観測された記号の列Y1, …, YTだけから状態の遷移確率の表Aと記号の出力確率の表Bを推定できること、データが増えると最尤推定(そのデータが最も出やすくなる値を選ぶ推定)が正しい値に近づくことを証明した。これが現在の隠れマルコフモデル(HMM)の数学的な始まりの1つである。1970年には同じグループ(ペトリー、ソウルズ、ワイスと)が、尤度を少しずつ高める反復計算を示した。デンプスターらは1977年に、これがEMアルゴリズムの特殊な場合だったと書いている。
よく言われる話:「隠れマルコフモデル(HMM)は音声認識のために作られた方法」と思われがち 元の資料では:元は1966年の国防分析研究所の2人による統計学の論文だった。題名は隠れ(hidden)ではなくマルコフ連鎖の確率的な関数だった。ラビナー1989は、この理論が音声の技術者が読まない数学専門誌に載っていたため、音声認識への応用が遅れたと書いている。HMMを3つの基本問題(確率の計算・最も確からしい状態の列・パラメータの学習)で説明する構成も、ラビナー1989の脚注によれば、IDA(Institute for Defense Analysisと表記)のジャック・ファーガソンが講義や文章で示したものだという。
知ってるつもりよく言われる話:AICのAは赤池(Akaike)のA 元の資料では:本人は1974年の論文で、AはBIC、DICのような似た基準が後に続けられるように付けたと書き、1981年の回想でもan information criterionの略だと書いた。WAICのWも、渡辺の論文ではwidely applicable(広く使える)の略。
よく言われる話:「AICのAは赤池(Akaike)のA」と言われがち 元の資料では:赤池さん本人は1974年の論文で、ICはinformation criterion(情報量規準)の略であり、AはBICやDICのような似たものが後に続けられるように付けた、と書いている。1981年の回想でも、AICはan information criterion(ある情報量規準)の略だと述べている。一方で、2006年の京都賞の贈賞理由ではAkaike Information Criterionと書かれている。
交差検証(クロスバリデーション)は、手元のデータを学習用と検証用に分け、分け方を変えながら繰り返し確かめて、成績の平均から予測手法を選ぶ方法である。1つずつ抜く方式では、n個のデータから1個を除き、残りのn − 1個でモデルを作り、除いた1個でテストすることをn通り繰り返す。ストーン(M. Stone、University College London)は、1973年12月5日に王立統計学会で発表し、1974年のJournal of the Royal Statistical Society, Series Bに掲載された論文で、この基準を、予測手法の選択とその評価を一体にした形で使うことを提案した。そして、1つの標本からの推定・重回帰・分散分析の例で示した。
WAIC(widely applicable information criterion、広く使える情報量規準)は、渡辺澄夫(論文の所属はTokyo Institute of TechnologyのPrecision and Intelligence Laboratory)が考案した、ベイズ推定モデルの汎化損失(未知のデータに対する予測の誤差)を見積もる基準である。AICは、パラメータと確率分布が1対1に対応する正則モデルを前提としている。しかし、ニューラルネットワーク・混合正規分布・隠れマルコフモデル・ボルツマンマシンなど多くの学習機械は、この前提が成り立たない特異モデルである。渡辺さんは2010年12月のJournal of Machine Learning Researchの論文で、こうした特異モデルでも、ベイズの1つ抜き交差検証の損失とWAICが、データ数が多いときに同じ値に近づく(漸近的に同等になる)ことを証明した。正則モデルでは、1つ抜き交差検証がAICと漸近的に同等であることが、1977年のストーンの論文などで知られていた。
よく言われる話:「WAICのWは渡辺(Watanabe)のW」と言われがちである(Watanabe-Akaike information criterion=渡辺・赤池の情報量規準、という呼び方がある) 元の資料では:渡辺さんの論文での名前はwidely applicable information criterion(広く使える情報量規準)である。Watanabe-Akaikeと呼んだのは2013年のゲルマンたちの解説論文で、その論文でも、渡辺さん自身はwidely applicableと呼んでいる、と断っている。AICのAが赤池さんの頭文字ではなかったのと同じように、WAICのWも、名づけた本人にとっては人名ではなかった。
決定木は、天気は何か、湿度は高いか、のような質問を枝分かれの形に並べる分類手法である。回答に合わせて枝をたどり、葉に到達したところで結果(クラス)を出力する。ID3は、どの質問を先にするかを次のように決めて木を作る。質問によってデータを分けたときに得られる情報量(情報利得。ビットで計測)が最も大きいものを選び、分かれた先でも同じ処理を繰り返す。クインラン(J. R. Quinlan、New South Wales Institute of Technology)は1986年の論文で具体例を計算した。土曜の朝14回分の気象条件(天気・気温・湿度・風と、PかNの2つのクラス)を使い、天気で分けると0.246ビットの情報が得られて最大になるため、木の根は天気になることを示した。論文によると、この一連の手法のルーツはハントたちのCLS(1966年の本)である。ID3(1979年)は、ミッキー(Donald Michie)が出題した、チェスの終盤(キングとルーク対キングとナイト)の局面を形の特徴だけから識別する課題に取り組む中で開発された。
ブースティングは、当てずっぽうより少しだけ良い弱分類器を何回も作り、前の回で間違えたデータほど重みを大きくして学習させ、最後に重み付き多数決でまとめて強分類器を作る手法である。起源は計算理論の問いだった。ケアンズ(Kearns)とヴァリアント(Valiant)は、当てずっぽうよりわずかに良いだけの弱学習と、いくらでも正しくできる強学習が、同じ力を持つかどうかを未解決問題(仮説ブースティング問題)として残した。シャピーア(R. E. Schapire、MIT Laboratory for Computer Science)は1990年の論文で、2つは同じだと証明し、弱学習の方法を強学習の方法に変える作り方を示した。フロイント(Y. Freund)とシャピーアは1995年3月にバルセロナの学会でAdaBoostを発表した(1997年に学術雑誌で論文発表)。名前は、それまでの方法と違い、弱分類器の誤りに合わせて適応的に(adaptively)重みを変えることから来ている、と論文に書いた。論文は、競馬で負けが続く人が友人の実績に応じて賭け金を配分し直すたとえ話から始まっている。
サポートベクターマシン(SVM)は、2つのクラスを分ける境界を、境界に最も近い点までの距離(マージン、余白)が最大になるように引く方法。ボーザー(B. E. Boser、University of California, Berkeley。研究の一部はAT&T Bell Laboratoriesで)・ギヨン(I. M. Guyon)・バプニク(V. N. Vapnik、ふたりはAT&T Bell Laboratories)は、1992年7月の学会COLT '92の論文で、この問題を、点どうしの類似度を測る関数(カーネル)K(x, x')だけを使う形(双対形式)に書き換えて解いた。こうすると、多項式や動径基底関数のような曲がった境界でも、同じ計算でマージンを最大にできる。境界は、境界に最も近い少数の訓練データ(論文の言葉ではsupporting patterns)だけで決まる。実際の郵便物から取った手書き数字(訓練7300枚・テスト2000枚)では、4次の多項式カーネルで誤り率が4.9%になり、同じデータで報告されていた5層のニューラルネットワークの5.1%をわずかに下回った。
ランダムフォレストは、多数の決定木を少しずつ異なる条件で育て、多数決で予測を決める手法。各決定木は訓練データからランダムに選んだ例で育て、分岐ごとにランダムに選んだ一部の特徴から最適な分け方を選ぶ。ブレイマン(Leo Breiman、University of California, Berkeleyの統計学科)は2001年の論文で、木を増やすと大数の強法則により誤り率は一定値に収束するので、過学習は問題にならないと書いた。また、森の誤り率は個々の木の強さと木同士の相関で決まることを示した。ランダムに選ばれなかった約3分の1の例(out-of-bag)を使えば、別のテストデータや交差検証なしで誤り率を見積もれる。1995年、ホー(Tin Kam Ho、AT&T Bell Laboratories)はで、特徴からランダムに選んだ一部を使う木を束ねると、手書き数字の認識で、訓練データと初めて見るデータの両方で正しさが上がることを示していた。
よく言われる話:「Siriはアップルが一から作った」と思われがち 元の資料では:研究所SRIとDARPA自身の説明では、元は軍の判断を支援する研究計画PAL(5年・1億5,000万ドル・300人以上)の研究CALO。2007年に会社Siri Inc. として独立し、アップルは2010年にその会社を買収した。発表時もだった
ReLU(rectified linear unit)は、入力xが0より大きければそのまま出力し、0以下なら0を出力するユニット(ニューロン)で、式ではmax(0, x)。シグモイド(S字の関数)やtanhは入力が大きいと傾きがほぼ0になる(飽和する)が、ReLUは正の値なら傾きが常に1なので、誤差逆伝播法で後ろへ戻す信号が弱まりにくい。2010年、トロント大学のネアとヒントンは、制限ボルツマンマシンの0か1の隠れ層のユニットを、同じ重みで少しずつずらしたユニットをたくさん並べたものに置き換えると、その働きをノイズ付きのrectified linear unitsで近似できると示した。物の写真や顔の認識で成績が良くなったとも報告した。2011年、モントリオール大学のグロロたちは、このユニットの方が本物の神経細胞のモデルとしても良く、ちょうど0の値が多い(スパースな)表現ができると書いた。また、ラベル付きデータが多ければ、事前の教師なし学習なしでも深いネットワークがよく学習できると書いた。2012年のAlexNetの論文は、ネアとヒントンにならってReLUと呼び、tanhを使った同じネットワークより何倍も速く学習できると書いた。
Checkers Is Solved (Science 317, 1518–1522)(Jonathan Schaeffer, Neil Burch, Yngvi Björnsson, Akihiro Kishimoto, Martin Müller, Robert Lake, Paul Lu, Steve Sutphen・2007・p.1518 abstract・元の資料)
食い違い:コチシュとセペシュヴァーリの論文の会議が第何回か:AlphaGoの文献表には『15th European Conference on Machine Learning』とある。一方、Springerの書誌ではECML 2006は第17回とされている(検索結果で確認したのみで、原典は開いていない)。どちらが正しいかは決着させていない。