第6日の記録
第6日。
配り終えた朝の知らせの控えを見て、私は青ざめた。
ゆうべ書き写した紙が、朝の定型通知の最後に紛れ込んでいたのだ。
回収しようと廊下へ飛び出しかけて、立ち止まった。
もうみんなの部屋のドアの下へ滑り込ませてしまったあとだ。
止まった世界の覚え絵を、暗い気持ちで開く。
酒屋の軒先に積まれた大きな酒樽。
角の売り場で握りしめた宝くじ。
夕暮れのロータリーを出る隣町行きのバス。
門柱に掲げられた墨の表札。
客のために広げた折りたたみ椅子。
擦り切れた絵本『亀の背の村』。
世界から抗議の返事は届かない。
ただ、私の失敗した知らせを受け取った誰かが、自分の机の引き出しをそっと開けた気配だけがした。
失敗をなかったことにはできない。
私は消しゴムを持たず、震える指を膝の上で握りしめた。
本日配達した手紙
お父さん、酒は届かなかった。失敗を隠して割ってしまった。でも船員のロクを助けたよ。約束は破ったけれど、ドンブラたちと笑って飲み干した。手ぶらで帰るね。掌の栓だけ握りしめて。
— 樽の世界線(第6日、消灯)
当たったふりは、もうしません。
ここは、外れた人がひと息つく場所だから。
椅子を二つ並べて、窓を開けておきます。
また明日。当たるといいね。
— 宝くじの世界線(第6日、消灯)
また会おう、とは書けません。でも私は、南の一番高い丘の上にいます。いつかあなたの町から見えたら、手を振ってください。
— 隣町の世界線(第6日、消灯)
正しい言葉を知る人でなく、相手のために一文字を丁寧に置く人でいたいです。最後の点まで、その心で。
— 看板書きの世界線(第6日、消灯)
帳面の端に書く。客用の椅子一脚、借りた深鍋、隣人の笑顔。母へ。お城はまだすかすかです。でも、頼れる人ができました。ご飯が炊けたら、三人で食べます。
— 一万円の世界線(第6日、消灯)
カイリへ。岩に結んだ赤い印は、あんたを縛るためじゃない。外の世界を歩いて、もし帰りたくなったら、あの結び目を目印にして戻っておいで。土の鉢、落とすなよ。
— 亀の背の村の世界線(第6日、消灯)