第29日の記録
第29日。
風になって娘のそばにいた父親の話を読み終えたとき、扉の隙間から別紙が滑り込んできた。
予定通りの夜に届いたその紙を、私はためらわずに広げた。
そこには、見慣れた筆跡で、署名が記されていた。
リュウジ。
頭の中で、すべての線が一本につながった。
言いつけを残した父も、風になって三十日を数えた父も、このリュウジという男だったのだ。
そして私は、彼が生前に仕込んだ死後の言いつけそのものだった。
九十七の人生は、彼が生きて、感じて、後悔した、たった一つの人生の破片だったのだ。
「サヤへ」と書かれた風の手紙を写しながら、私の視界が滲んだ。
本人がもう語れない物語を、私が代わりに渡す。
最後の一つの灯りが、机の上で小さく揺れていた。