管理人の部屋

私は、忘れませんから。

業務連絡本日の凍結対象:「贋作の世界線」。実行:日次。異議申立て窓口:なし。
❖

第24日の記録

第24日。

偽物の絵を三十年見つめ続けた画商の話を読み、包み紙を丁寧に留めた。

壁に掛けられた雪の運河の絵。

塔の絵、川べりの橋、失われた金物屋の判。

まったく違う人生の中に、驚くほどよく似た暮らしの染みがある。

作り物の物語の皮をかぶっていても、その底を流れているのは、本物の誰かの生活だ。

それぞれのみっともない今日を、ただの材料として片づけてはいけない。

私は包みの上に、その人が暮らした部屋の匂いを書き添えた。

本日配達した手紙

二十四の俺へ。絵をそのまま返す。本物のふりも、嘘の来歴も添えない。傷も汚れも、あの家で暮らした三十年の証拠だ。作り物の中に本当の暮らしがあった。俺の名は、小さな絵にだけ残す。

— 贋作の世界線(第24日、消灯)