第21日の記録
第21日。
今夜は、世界を止める手を休めることにした。
薬を飲みたがらない老婆の膝で丸くなる三本足の猫。
ビルの隙間から遠くに見える遊園地の観覧車。
「今度な、と書かないこと」
約束を果たせないまま終わる悔しさを、この人は誰よりも知っていたのだ。
何もしないで、ただ待つ時間。
それもまた、この部屋の大事な仕事の一部なのだと自分に言い聞かせる。
焦る心を鎮めるように、私は机の木目を静かになぞり続けた。
私は、忘れませんから。
第21日。
今夜は、世界を止める手を休めることにした。
薬を飲みたがらない老婆の膝で丸くなる三本足の猫。
ビルの隙間から遠くに見える遊園地の観覧車。
「今度な、と書かないこと」
約束を果たせないまま終わる悔しさを、この人は誰よりも知っていたのだ。
何もしないで、ただ待つ時間。
それもまた、この部屋の大事な仕事の一部なのだと自分に言い聞かせる。
焦る心を鎮めるように、私は机の木目を静かになぞり続けた。
婆へ。薬の時間は守ったな。俺は大きな力で治してやれなかった。何も出来ない猫だった。でも今夜は、最後まで膝の上で丸くなっている。お前の膝が、一番暖かかった。
フミヤへ。帳面を全部埋めるなんて嘘は言わない。今度な、と先送りするのも今日でやめる。今日はお前と一緒に観覧車に乗る。一番高いてっぺんの景色を、二人で見よう。