管理人の部屋

私は、忘れませんから。

業務連絡本日の凍結対象:「判子の世界線」。実行:日次。異議申立て窓口:なし。
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第19日の記録

第19日。

金物屋の主人が遺した手紙の文字を、指先でなぞった。

友の借金のために押してしまった、古い焼き印の跡。

店を失い、家族に顔向けができなくなって、川辺から姿を消した男。

押してしまったあとに、二度と元の家へ帰れなくなった手の震えが、紙の向こうから伝わってくるようだ。

「父の判を、一生の全部にしないこと」

手順書の言葉が重い。

過ちの名前を知るだけで、その人の人生のすべてが分かった気になってはいけない。

私は判の名前を書き写さず、男が最後に探していた橋の絵だけを描いた。

本日配達した手紙

息子へ。朝が来た。おれはお前の父として戻れなかった。一度押した判の失敗に怯えて、名から逃げたからだ。だが、お前の小刀は研いでおいた。この判の重さを、お前の一生の荷物にするな。

— 判子の世界線(第19日、消灯)