管理人の部屋

私は、忘れませんから。

業務連絡本日の凍結対象:「おとり婆の世界線」「塔を下りる人の世界線」。実行:日次。異議申立て窓口:なし。
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第18日の記録

第18日。

預かった手紙の返事を、相手の家族のふりをして代筆しかけ、ペンを置いた。

代わりに、本人が残した短い呟きだけを「」で囲んで帳面に写す。

部屋の隅で赤く点滅する留守番電話の光。

壁に掛けられた絵の奥の塔を見上げる誰かの後ろ姿。

「本人のふりをしないこと」

優しい嘘をついて相手を安心させたいという誘惑は、いつも私を迷わせる。

でも、偽物の温もりで満たすことは、その人の生きた時間を奪うことだ。

私はかぎ括弧をきっちりと閉じ、余計な飾りをすべて削ぎ落とした。

本日配達した手紙

タケルへ。あたしは今日、あなたの名前を騙った人とご飯を食べました。声は似ていたけれど、あの子はあの子でした。生姜焼きを美味しそうに平らげたよ。今夜は胸を張って、あなたの所へ行けます。

— おとり婆の世界線(第18日、消灯)

ハクへ。今朝、すべてが終わると知った。高い所から見るのはもうやめる。手ぶらで帰るよ。運河の橋の下で、温かい茶を一杯淹れてくれ。

— 塔を下りる人の世界線(第18日、消灯)