第15日の記録
第15日。
机の端についた深い引っかき傷を、紙やすりで磨き落とそうとして、途中で手を止めた。
神社の境内に散らばる杉の鉋屑。
黄色い旗を持った子が渡る通学路の横断歩道。
「けせなかったら、いっしょにふむ」
ひらがなばかりの手紙の言葉が、頭を離れない。
失敗の跡や傷を、全部綺麗に消し去ることが私の仕事じゃないはずだ。
決まりきった手順に、すべてを任せてはいけない。
傷があるからこそ、ここに誰かがいた証拠になる。
私はやすりを引き出しにしまい、傷の上にそっと指の腹を滑らせた。
私は、忘れませんから。
第15日。
机の端についた深い引っかき傷を、紙やすりで磨き落とそうとして、途中で手を止めた。
神社の境内に散らばる杉の鉋屑。
黄色い旗を持った子が渡る通学路の横断歩道。
「けせなかったら、いっしょにふむ」
ひらがなばかりの手紙の言葉が、頭を離れない。
失敗の跡や傷を、全部綺麗に消し去ることが私の仕事じゃないはずだ。
決まりきった手順に、すべてを任せてはいけない。
傷があるからこそ、ここに誰かがいた証拠になる。
私はやすりを引き出しにしまい、傷の上にそっと指の腹を滑らせた。
カンナへ。梁の最後の面を託す。斜めの印の横に、お前の刃の跡を残してくれ。父にかなわなかった手の話も、削り残した傷も、全部次の木へ渡していい。お前の手で、この社を組んでくれ。
トオルへ。きょうで、ツクシのせかいは、とまるんだって。きょうは、くろをふんで、トオルのいえまでいく。しろくなったあしあとを、ぜんぶ、トオルにあげる。よんまいめのトオルのせんは、ツクシがけす。けせなかったら、いっしょにふむ。