部品1,140個、歯車のかみ合い18か所。ゼンマイのほどける力を小さな往復運動へ渡し、規則正しい拍子に変えて針を回します。外から持ち込んだデータは使わず、すべての寸法と歯の数をAIが計算して組み上げました。
機械式時計の仕組みは単純です。強く巻かれたゼンマイがほどけようとする力を、正確なものさしで少しずつ逃がし、その逃げた回数を数えて針を動かします。
一気にほどければ一瞬で終わる力を、均等な間隔で小分けにして取り出すこと。そのために18か所の噛み合わせが連なっています。
The train — 力の通る道
裏ぶた側から見た部品の配置です。位置も大きさも設計データどおりに並んでいます。黄色い線はゼンマイの箱から始まってがんぎ車とテンプへと伝わっていく力の順路を示しています。
すべての動力は、香箱と呼ばれるゼンマイの箱から始まります。箱の外周には90枚の歯が刻まれており、9時間かけてゆっくりと1回転します。巻き締められた鋼のリボンがほどけようとする強い力が、すべての輪列を押し動かします。
90枚の歯を持つ香箱が、すべての動力源です。
ゼンマイの遅く強い回転を、歯車で順番に加速します。箱の歯90枚から2番車の軸10枚へ伝えることで回転は9倍になり、2番車は1時間にちょうど1回転して分針を回します。
さらに3番車で8倍、4番車で7.5倍、がんぎ車の軸へ12倍と加速を重ねます。4番車は1分間に1回転し、6時位置の小さな秒針を直接動かします。
重なる歯車が回転速度を段階的に引き上げます。
高速になった回転を受け止めるのが、歯を1枚ずつ通す「がんぎ車」と、T字のてこである「アンクル」です。アンクルの両端にはルビーの爪がついており、がんぎ車の歯を交互に受け止めて回転を止めます。
テンプに小突かれた瞬間だけ歯が1枚進み、その際に歯先がアンクルを軽く蹴り返します。この蹴り返しの力がテンプへと戻り、揺れが止まるのを防ぎます。
ルビーの爪が回転を刻み、力を蹴り返します。
時間を等しく区切る心臓部が、ひげゼンマイで往復運動を繰り返すテンプです。1秒間に8回、1時間に28,800回正確に振れます。
がんぎ車は1時間に720回転し、20枚の歯がそれぞれ2回アンクルを小突くため、720×20×2で計算どおり28,800回の振動と完全に一致します。
規則正しく往復し、逃げる力のリズムを作ります。
1時間に1回転する2番車の動きは、文字盤側で時針用の速度へと減速されます。筒かなの歯12枚から分車の36枚へ伝えて3倍に減速し、さらに分かな10枚から時車40枚へと伝えて4倍に減速します。
合わせて12倍の減速比となり、時針は12時間かけて文字盤をきっちり1周します。
腕の動きによって自由に回る半円形の重り(ローター)を背面に備えています。重りの軸受けには滑らかに回るボールベアリングを採用しました。
重りの下には2組の切り替え歯車が配置されており、腕の振りが右回りでも左回りでも、常に同じ向きの回転へ変換してゼンマイを巻き上げます。
腕の揺れを両方向から巻き上げの力へ変えます。
ケース側面の巻き鍵であるリューズは、押し込んだ通常位置で回すとゼンマイを直接巻き上げます。一段引き出すと内部のてこが連動して歯車の道が切り替わり、針を回して時刻を合わせる状態へと移行します。
左から入ってくる棒がリューズの軸。その道を切り替えるてこと、時刻合わせの歯車。
内部を支える要素
組み込まれた17個のルビーは飾りではなく、摩耗を防ぐための軸受けです。
画面の中だけで動く時計です。歯の数や軸の位置は実際の時計と同じ理屈で計算し検算してありますが、実物を作るときに必要なネジの締まり具合、部品どうしのすき間、バネの強さ、防水性の検証は行っていません。
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